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「これはなんだったかな、この赤いやつ」 「キク科、ガーベラです、マスター。花言葉は『希望』。赤色は『情熱』、『ロマンス』、『愛情』」 「はぁ、そんなものも植えてたか。じゃあ赤はナシだな。これは?」 「スターチス。イソマツ科、イソマツ属。正式名称はリモニウムです。花言葉は『変わらぬ心』、『途絶えぬ記憶』、『永遠の不変』」 「なんでこんなの植えたんだっけな」 「ドライフラワーを試してみたいとおっしゃっておりました、マスター」 「ああ、そうだった、そうだった。相変わらず君はよく覚えている」 「恐れ入ります」  男が庭に植えた植物の名前など、二、三どころかロボットは全て記憶していた。特別なことは何もない。一ビットのズレもない正確な記録が彼らの本分であり、したがって、そのことを褒められる筋合いもなかった。  先程の返答も、褒めに相当する言語を受け取った際の、応対プログラムに従ったに過ぎなかった。 「次はもっと、こう、黄色めの花がいいな。庭がさらに映える」 「では、マリーゴールドあたりなどいかがでしょう」 「いいね」  男はスターチスの咲く土の前にしゃがみ込んだ。つちくれまみれの軍手を外す。三ヶ月と二十一日前に買い替えた時、軍手は新品の白であった。
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