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「あと五分、どっちが多く取れるか勝負しよう」
20年前は離れたくないなんて可愛いことを言っていた一太。
守るべき大事な人と巡り会い、今は俺のもとから旅立とうしている。
ちいと寂しいが……まぁ、それもしゃあない。
「ぜってぃ、負けねぇぞ」
腕捲りをして釣り針を垂らした。
「いっくんもバーバも子供みたい。ねぇ、マー」
「うん、本当に」
未知と息吹が様子を見に来た。
二人は本当の親子のように仲がいい。
一太と同じように何かと面倒をみてくれる未知に息吹はすぐに懐いた。
まぁ、嫁姑問題がないだけ良しとしよう。
卯月家は今日も平和だ。
「なぁ、父さん」
「ん?何だ?」
一太が何かに気が付いたようだった。
「母さんのおなか、大きくない?気のせいじゃないよね?」
「いゃあ、その」
ドキっとして、折角釣り上げた大きいヨーヨーを思わず落としてしまった。
「父さんと母さんは結婚して20年経ってもラブラブで羨ましい」
一太に冷やかされ身の置き場に困ってしまった。
「息吹を幸せにしろよ」
「分かってる」
「何があっても二人を守り抜くんだ」
「たく相変わらず心配性なんだから。息吹も、おなかの子も、父さんも母さんも、遥香も、太惺も心望も、陽葵も、結愛も、菱沼組も、絶対に守るから安心して。やった!二つ同時に釣れた」
一太が歓声を上げた。
「今も俺は父さんが好きだよ。血の繋がりなんて関係ない。誰がなんと言おうが一太は俺の息子だって言ってくれてたときすごく嬉しかった。これからもとことん付いていくから覚悟しておいてよ」
「おぅ」
5分なんてあっというまだ。
でも息子とこうして腹を割って話ができて俺は嬉しかった。
やっぱり一太は一太で、俺は俺。
二十年経過しても何一つ変わらなかった。
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