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第一章/第一節 火ともし頃
海に面した街。
真っ白な家々。
咲き誇る桜の樹々。
橙色と群青色の空。
「ね。今、街の灯りが、どんどん点いているのが分かる? 家の煙突から、煙が出ているのが見える?」
それは、昼と夜の境の一瞬に現れた、幻想的な光景だった。
「あの火はね、森で働くみんなのおかげで燃えているんだよ。だから、みんなのありがとうの気持ち。それも含めて、ガトーになっているんだと思うな」
そのとき、ようやく分かったんだ。
自分が幸せになること。他人が幸せになること。
ここは、それらが強く結びついた街なのだと――。
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