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ロベリア
様々な種類の花が季節を問わず咲き乱れる、不思議な花園が広がる花の都レイソルム。
誰でも自由に花が摘める不思議な花畑のおかげでレイソルムには花屋が一軒も無い。近隣諸国にも評判で、多くの人々が行き交う賑やかな町だったはずなのに――。
レイソルムの町郊外に魔法使いが住み着いた。
それ以来、町はずれの花畑にはもの悲しい歌が響き渡るともっぱらの噂だ。
花畑に一歩でも足を踏み入れるものあらば、どこからかロベリアの花とともに風が吹きつけ行く手を阻むのだ。
風に舞う小さなロベリアの花一つ一つ、まるで囁き合っているかのような歌声は、四方八方から侵入者を取り巻く。
あまりに密やかな声なので歌の文句までは聞き取れない。だが、その歌声を耳にしたものは誰もが得も言われぬ気分になるという。
それはまるで悪意のようなものに中てられた感覚ーー。
大抵の者は憂鬱にさいなまれ、何もかもが嫌になり失踪してしまうらしい。
これは魔法使いの呪いに違いない。触らぬ神に祟りなしだ。
かくして花畑に近づくものはいなくなった。
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