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「駄目だったか~ ああ、腹立たしい! 何か買ってストレス発散しよ!」
香世はスマホを放り投げた後に拾い上げてフリマアプリを立ち上げた。彼女はストレス発散を買い物で行う。昔までは町に出向いてのウィンドウショッピングでの買い物を行っていたのだが、最近ではパソコンやスマホで何でも買えてしまうために家から出ないでの買い物に移行している。
そんな香世は今日も今日とてフリマアプリで「出物」を探す。ブランド物の鞄、時計、財布、買わなくてもスワイプしながら見ているだけで楽しい。高級ブランド品に混じり青く輝くものが見えた。
「何よこれ…… 指輪?」
それは指輪だった。白銀に輝くプラチナのリング、その土台には青く輝くダイヤモンドが乗せられていた。ああ、ブルーダイヤモンドと言うやつか。興味を惹かれた香世は指輪のアイコンを軽くタップした。
中古品、リング。18金ホワイトゴールド・形状ソリティア。ストーン、ブルーダイヤモンド4カラット。
説明文を見た瞬間に香世は大笑いをした。ブルーダイヤモンドなんて貴重品がフリマアプリに出るわけがないと思ったからである。大方、サファイアをブリリアントカットに加工した偽物に決まっている。映画タイタニック公開当時はこんな偽物でも飛ぶように売れたらしい。そんなことを考えた香世はブッと吹き出してしまった。
その値段500万円也。なんと言う強気の値段設定だろうか。これはもう詐欺として訴えてもいい商品だろう。香世は説明文の一番下にスワイプをした瞬間に更に驚くべきものを見た。
鑑定証、それも誰でも知っている宝石店からで鑑定士の署名までついた信用できるものの画像が添付されていた。まさか本物だろうか。この世に存在するだけで奇跡とされるブルーダイヤモンド。本来、ダイヤモンドは無色透明であればあるほど価値が高いとされている。しかし、ブルーダイヤモンドに関しては話が変わってくる。地中にてダイヤモンドが生成される際にホウ素が含まれることによってその身を青に変えるのだ。しかし、地中にはホウ素はほぼ存在しないとされている。つまり発掘される可能性は限りなく低いのである。
フリマアプリでもこんなの出るんだと思いながら香世は下部へのスワイプを続けた。すると、いきなり見た瞬間に「ドキっ」と肝を冷やすような文字が香世の目に入ってきた。全部読むのも億劫になるような注意文が画面下部にびっしりと詰められていた。
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