人を呪わば穴二つ

4/9
前へ
/9ページ
次へ
実在のホープダイヤモンドの呪いの話をアレンジしたような頭のおかしい文章としか思えない。ロマンス詐欺に引っかかる主婦が好きそうなお話。ダイヤモンドを捨てればいいのに売りに出すところ「高いカネ出して買ったから捨てるのは勿体ない」って気持ちが強いのだろうか。それにしては500万と高級(たか)過ぎる。こんなの小学生でも騙せないというのに。香世は呆れた。 香世は呆れつつバカバカしいと考えつつも、ブルーダイヤモンドの画像を見ているだけで体全体がその中に吸い込まれるような気分に陥り、青く深い海の深淵を思わせる光が放つ魔力に魅了されていくのであった。 幸い、金ならある。始めは結婚資金だと思って貯金していたのだが、婚活が上手く行かなくなってきた頃から終の住処にするためのマンション資金へと変わっていた。それを切り崩せば500万円ぐらいなら出せる額である。 香世は迷った。こんな明らかな詐欺商品に加えて、嘘にダイヤモンドコーティングしたようなアホくさい話。普通の人間ならまず詐欺を疑い手を出すはずがない。香世はフリマアプリを閉じようとするが、どうしてもブルーダイヤモンドが欲しくてたまらなくなり閉じることが出来ない。 香世は思い切った。詐欺だったとすれば訴えればいいだけのこと。届いた後に鑑定士に見て貰って「ただのサファイアです」と言われればそれこそ訴えるだけだ。 彼女は狂気にも似た感情を孕みながら「購入」のボタンをタップした。 香世はこのフリマアプリでものを購入するときは支払いを自動引落しにしている。もう後戻りは出来ない…… 彼女はその直後に自分の銀行口座を確認した。500万円は引き落とされていた。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加