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香世が郵便局に行き指輪の入った段ボールを預けたその刹那、母より電話が入る。
「お父さん、ガン治ったって! 奇跡が起こったって! 本当によかった……」
指輪を手放した瞬間にこれか。矢張りあの指輪は呪いの指輪だったか。彼女は口角を上げた。あたしは呪いを出し抜いたんだと笑い声を上げた。
前の持ち主は「夫は交通事故で死亡」
その前の女優は「夫は事業に失敗し自殺」
その前のお姫様は「夫は戦死」
つまり、結婚は出来ているということになる。これならば独身の状態で指輪を所有すれば夫を奪うために結婚まで導いてくれるのではないか? と、不幸の波の中で香世は考えた。
これまで連戦連敗だったのに指輪を持った途端に保立のような優良物件とトントン拍子に結婚が決まった。数々の不幸が重なったが結婚さえ出来れば安いもの。彼女は数々の不幸でさえも結婚のための踏み台にしたのである。家や仕事はともかく、祖父祖母や従兄弟まで死ぬとは思わなかったが…… その犠牲でさえも彼女にとっては安いもの。
指輪はもうない! 後に待っているのは幸せのみ!
香世の未来は希望の光で眩しいぐらいに満ちあふれていた。
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