人を呪わば穴二つ

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数日後、結婚式の打ち合わせを終えた二人は高級レストランで食事をしていた。祖父母がこの三ヶ月でバタバタと亡くなっていることで結婚式の自粛を考えたが、親戚一同が「やっとのことでの結婚なんだから自粛することないよ」と優しさを出し、開催の流れとなった。そもそも、自粛の提案は保立の方からで香世の方はそんな気はサラサラなかった。 「お疲れ様~」 二人はグラスを合わせた。心地よい音がレストラン内に響き渡る。 「婚約指輪渡してなかったね」 「別に気にしなくていいのに」 「本当に給料の三ヶ月分するなんて思わなかったよ。あ、こういうのは値段言わないのがルールだったね」 「もう、あなたったら……」 帆足は指輪ケースをポケットから取り出した。ポケットの膨らみで気がついていたよ、こういうところ可愛いんだから。香世はぽっと頬を赤らめる。 「正式なプロポーズをしてなかったからね。今させてもらうよ」 帆立は指輪ケースを香世の前に差し出した。ああ、ついにあたしにも パカッ とされる時が来るなんて…… 嬉しくて堪らない。彼女の人生の中で一番幸せな瞬間(とき)が訪れた。 パカッ 指輪ケースの蓋が開かれた瞬間、香世は青ざめた。なんと、数日前に売りさばいたはずのブルーダイヤモンドが目の前に現れたのである。それから保立は照れくさそうに口を開いた。 「君、始めて婚活パーティーで会った時から青い指輪はめてたじゃん? ああいうのが好きだと思って婚約指輪もそれっぽいのにしようと思ったんだよ。そうしたらあの指輪、ブルーダイヤモンドって言って物凄く高いやつじゃん? 宝石店にも出回るもんじゃなくて困ったよ。スマホアプリで探したら本物見つけたのよ! しかも鑑定証二枚付きでお墨付き! 何より100万! 普通の婚約指輪より高いけど思い切って買っちゃった。はい」 保立は香世の左手を取り、薬指に指輪をはめた。彼女の顔はその指輪の青い輝きのように青ざめていた。 このままではヤバい。香世は指輪を外そうとした。その後は逃げるつもりだった。しかし、いつの間にか周りは拍手をする客に囲まれており逃げるに逃げられない。 フラッシュモブなんて雇うんじゃないよ! フリマサイトで明らかに怪しい100万円の指輪を買ったりどうかしている。誠実そうな顔しておきながらやることは大胆でつまらない。香世の中で保立への愛は急激に冷めるのであった。 その後の二人が幸せになれなかったのは間違いない……                                 おわり
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