15.邪教

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15.邪教

 パンノニア総督から邪教取り締まりに、兵を出すよう要請が来た。グナエウスとマルクス元軍団長が私を参加させるために取り計らってくれた。アクイラ大隊長には我が軍団の兵の家族が邪教徒に捕らわれている可能性があると報告し、兵の間にも邪教の噂が流れ、動揺が広がった。  グナエウスとアクイラ大隊長、私も参加し、軍団間での調整会議が開かれた。他に第7と15軍団長と第7軍団の第4大隊長が参加した。  取り締まりには、我が軍団から私の指揮する「少年隊」が参加する。第7と15軍団は夫々1個大隊を出す。第15軍団からはグナエウス率いる第2大隊が参加する。残りの部隊は町と市を制圧し、邪教徒の捜索と治安維持にあたる。邪教徒に知られないために、兵への伝達は出動寸前までしない。 現場の指揮はグナエウスが取る。洞窟への突入は私の「少年隊」が行う。洞窟の包囲と支援はグナエウスの直属中隊が行い、2個大隊が山全域の包囲と捜索を行う。邪教徒の数は百名くらいで、戦闘可能なのは半分もいない。退役兵や現役の軍団兵も十名程度いるとみられる。儀式の最中、邪教徒は薬や酒で酩酊状態に陥るので抵抗は軽微だろう。  洞窟の場所の説明を受けて衝撃を受けた。私がアダの歌を聴いていたあの洞窟だ。あそこなら防御は容易だ。ただ、小川が近くにあるので隠れるには不向きのように思われた。洞窟の入り口は一つ、入ると大きな空間があるだけ。隠れる場所は殆どない。入り口を抑えれば捕らえるのは容易だ。入り口が小さく、ここに兵を配置して抵抗されたら、我が方に大きな被害が出る。大弓など使われたら、目も当てられない。  捕らえた後の処置をグナエウスが説明した。  「邪教徒は全員処刑し、十字架にかけて見せしめとする。」  私はその説明に動揺し、声を上げた。  「それはやり過ぎでは。」  グナエウスは私を睨みつけ、厳しい口調で応えた。  「邪教徒らは人を食い、乱交を行い、ローマの秩序を破壊する。生かしておくわけにはいかない。」  アダから聞いた話と違う。彼らの指導者キリストは殺生を好まぬのではないか?いや、彼らの神は異教徒の死を好む。ソドムとゴモラは彼らの神を崇めないから滅ぼされた。ダビデは彼らの神の助けで無数の異教徒を殺して王となった。エジプトのファラオに逆らった男を救うために、彼らの神は多数のエジプトの民を殺戮した。「ボルボル」はキリスト教徒を名乗ってはいるが、キリスト教徒ではない。異端者だ。彼らの神が「ボルボル」の血を求めているのか?グナエウスは彼らの神の指示に従っているだけなのか。  私が考えている間にもグナエウスが話を続けた。  「但し、邪教徒に捕らわれている民もいる。現場では抵抗する者以外は殺さず捕らえる。審理で邪教徒とわかれば処刑する。」  会議は終わり、取り締まりに向けて準備が始まった。私はこの会議でグナエウスに不安を覚えるようになった。なんであれ、アダの身は私が守るしかない。  取り締まり当日の夜更け、「少年隊」に出動命令が発令された。装備は剣と松明だけ。松明をつけずに静かに出発し、町の外でグナエウスの直属中隊と合流して洞窟へ向かった。我が部隊が先発して山に入った辺りで、2個大隊が後に続く。第7、15軍団と我が大隊の残りは町と近くにある市へ出動し、警戒と邪教徒捜索を行う。  洞窟に近づくと低い太鼓の音が響いている。強く叩いている感じではなく、わざと弱く叩いているようだ。単調な繰り返しで、音楽というよりも何かのテンポを取っている。例えるなら行軍時の太鼓のような感じだ。入り口から明かりが漏れていた。大勢の祈りの声が聞こえる。私はグナエウスと共に部下を入り口の周囲に配置し、松明を準備させた。 洞窟周辺の雰囲気が以前に比べ、だいぶ変わっている。周囲にあった彫刻を施した岩がなくなり、代わりに細かく砕いた石が無数に転がっている。入り口の彫刻があった辺りは削り取った跡があり、彫刻は消えていた。現地の神を破壊し、神域を汚して自分達の神域を作り上げたのだろう。他の神を自らの神として取り込むローマとは真逆だ。彼らの神は他の神の存在を許さないようだ。  準備を終えたところで、私とグナエウスは二人だけで洞窟の入り口に近づき中の様子を窺った。百名くらいの人々が入り口を背に跪き、両手を結んで祈りを捧げている。一番奥には指導者と思しき人物が両手を挙げ、天井を仰ぎ見ている。入り口に一番近いところに太鼓を叩いている者がいる。 蝋燭台が人々を囲むように配置され、5匹の大きな犬が人々を囲んでいる。どの犬も前足を立て後ろ足を畳んで座り、口を開けて舌を出し、一番奥の人物の方を向いている。餌を期待する仕草に似ている。犬の首に縄が巻き付けてあり、縄は数台の蝋燭台に繋がっていた。犬が飛び出すと蝋燭台が倒れる仕組みのようだ。有事の際には犬をけしかけ、明かりを消して逃げ出そうとの魂胆だろう。あれほど大きな犬と戦うとなると厄介だ。 もしかするとあの犬は琥珀を商う北の民かもしれない。北の民は人の血を飲み肉を食い、狼に化けるという。人の血肉を食らい狼となって邪教徒を守護しているのだろう。噂の人狼だとすると、犬よりもさらに厄介だ。 犬の心配をして考えを巡らしていると、邪教徒の指導者が叫び声を上げた。  「欲に屈することなく、兄弟たちの罪を集めようぞ!さぁ、聖餐式を始めよう!」  指導者の叫びを合図に、信者たちは2人づつの組になり、各々が壺から何かを飲み、皿の液体に手を浸し、口々に叫び声を上げた。手を皿に入れて叫ぶ。  「我らは汝に贈り物、キリストの肉を与える。これはキリストの肉!」  壺から何かを飲み、叫ぶ。  「これはキリストの血!」  グナエウスは手で目を覆い、吐き捨てるように呟いた。声は怒りに震えている。  「肉と言っているのは男の精。血と言ってるのは女の月のもの。ここまで主を冒涜するとは。奴ら許せん。」  私はグナエウスに対して疑問を抱いた。グナエウスは彼らの神ばかり気にしてるが、姪のアダのことは気にならないのか。この危険な状況にアダはいるのだぞ。私はこのまま洞窟の中へ飛び出していきたい気持ちを無理に抑えているのに、グナエウスは何とも思っていないのか。疑問を通り越して怒りすら湧く。  グナエウスと共に部隊へ戻り、突入準備を整えた。すると突然、犬の吠え声が響き、洞窟の明かりが消えた。私はとっさに見つかったと思い、洞窟の入り口の包囲を命じ、人々が飛び出してくるのを待った。しかし、飛び出してくる者はおらず、中から大勢の喘ぎ声が聞こえてきた。歓喜の叫びまで響いている。グナエウスが嫌悪感も露に呟いた。  「はじめたな。」 酩酊しているとはいえ、邪教徒は百名おり、人狼かもしれない獣が五匹いる。私は人の捕縛に半数の5個小隊を充て、獣対策に5個小隊を充てた。一匹につき8人で当たれば、たとえ人狼だとしても何とかなるだろう。百名に対し、40名というのは不安があるが、いざとなれば外にいるグナエウスの中隊80名を呼べば何とかなる。 まず、獣に対する5個小隊を私が指揮して突入し、獣を排除すると同時に蝋燭台があった付近に布陣して全体を包囲する。続いて中隊副官マルクスが指揮する5個小隊が突入して捕縛を行う。獣が只の犬だとしても番犬として訓練されているのなら、8人でも手こずるだろう。  下の方からグナエウスの伝令プブリウス・ヴィブラヌスが走ってきた。プブリウスは全軍の配置が完了したと伝えてきた。2個大隊が山の主要部を抑え、残りの2個軍団は町と市に入った。グナエウスは自身の直属中隊を入り口を囲むように配置し、私は「少年隊」を2列縦隊に並べ、突入に備えた。グナエウスは私の準備が整うのを確認して号令を下した。  「突入!」  「少年隊」を率い、内部へ突入した。我々が突入すると、一面裸で抱き合う男女で覆われていた。女同士や男同士で抱き合っている者もいる。逃げるどころか、立ち上がる者すらいない。誰もかれも様子がおかしい。おそらく意識を曇らす薬か何かを使っている。催眠薬の阿片や、ドリュクニオン(朝鮮朝顔)の実から作った発狂剤マニコンとか、霊感を高めるために狂気を誘うのに使うハリカカボスの根などに似た物だろう。 抵抗する者はなく、捕縛は容易だった。犬はいつの間にかいなくなっていた。我々に驚いて逃げたようだ。番犬として訓練された犬でも人狼でもなかった。過度に用心しすぎたが、不用心に突入して大きな被害を受けるよりはましだ。我が中隊の突入が成功すると、グナエウスも直属の小隊を率い、洞窟へ入って司令部を設置した。  私はアダを探したが、捕縛された者の中にはいない。今日は参加していなかったのか、どこかに隠れているのか、手遅れだったか、焦りが募る。洞窟を見回すと、壁にはいくつもの布が掛かり、何かを隠しているようだ。一つをまくると横穴があった。部下に命じ、布の後ろを調べると横穴が幾つも見つかった。直ちに全ての横穴の捜索を命じた。  最初に見つけた横穴にアダがいる気がして一人で飛び込んだ。横穴は深く、気持ちが焦り走り出していた。突き当りに布が掛かっていた。乱暴に布を引き、中に入るといきなり剣が飛び出した。剣をかわし、相手を確認すると、左手に剣を握った裸の男だ。酷く痩せこけ、右手に布を分厚く巻き付けている。おそらく右手がないのだろう。奥にもう一人、うずくまって腕に何かを抱えた裸の女がいる。男をよく見ると知った顔だと気が付き声を上げた。  「デクリウス中隊長!」  以前とは容貌がまるで違う。すっかり痩せこけ、正気を失っている。声に反応してデクリウスは人の声とは思えぬ唸り声を挙げ、剣を振り上げて襲い掛かってきた。反射的に剣をかわし、デクリウスの胸に剣を突き刺した。またやってしまった。私はとっさに叫び、デクリウスに飛びついた。  「中隊長!」  デクリウスは血の泡を吹き、何も言わず動かなくなった。奥の女は抱きかかえた物に何か呟いている。剣を右手に握りしめ、左手で松明をかざし、ゆっくりと女の前に跪いた。体中に痣があり、痩せ細っている。間違いない、アダだ。見間違えるはずもない。 女の後ろに気配を感じ頭を上げると、ブランウェンが立っていた。髪がひどく乱れ、悲しい顔をして涙を流していた。ブランウェンのあんなに悲しい顔、乱れた髪は見たことがない。アダの方は触れたとたんに消え去りそうなくらい弱々しい。何を言っていいのか、何をしていいのかもわからない。何を考えていいのかもわからなくなってきた。少し後退りして、2人を見ていた。しばらくすると、アダの呟きが耳に届き始めた。  「殺して。殺して。」  同じことを繰り返している。アダの頭がゆっくり上がり、私の顔を見ると彼女は言った。  「兵隊さん殺して。この子のところへ連れてって。」  アダが抱いていた物が目に飛び込んだ。小さな頭蓋骨だ。私は頭蓋骨を見つめて言った。  「君の子か?」  アダは頷き、また同じことを繰り返した。  「兵隊さん殺して。この子に会いたい。」  アダは私が誰かわからなくなっている。あまりのことに私は言葉を失った。何も言えずに彼女と彼女の子を見つめるしかできない。すると、ブランウェンが跪いてアダの頭を抱いて顔を寄せた。アダは頭をあげてブランウェンの目に視線を合わせた。 信じられなくなり、目を閉じ頭を振って幻を追い払おうとした。目を開けるとブランウェンは消え、アダが剣を胸に突き立てていた。慌てて、アダから剣を取り上げようとしたが間に合わず、剣はアダの胸に深く突き刺さった。右手に持っていたはずの剣がない。私は言葉にならない叫び声を挙げ、アダを抱きかかえた。アダは微笑み、小さな声で言った。  「兵隊さん、ありがとう。」  アダは最後まで私が誰か思い出さなかった。ブランウェンの時より酷い。また壊してしまった。最愛の人と親友を手にかけてしまった。顔を上げると、ブランウェンが目から血を流して立っていた。全ての幻を振るい払うように強く目を閉じ、頭を振り回し、叫び声を上げた。 気が付くと、板に乗せられて運ばれていた。私を運んでいる一人が何度も声をかけてきた。私の中隊のマルクス・アセリウス百人隊副官の声だ。  「中隊長。中隊長。」  酷い頭痛に襲われて再び気を失った。  次に気が付くと、ベットの上で寝ていた。窓からは日の光がさしていた。周囲を見渡すと空いているベッドが幾つも並んでいる。軍団付属の病院だろう。叫び声がした。  「目覚めました。目覚めました。」  声の方に頭を向けると、私を指さしながら叫ぶ男と、軍医が私の方へ歩いてきた。軍医が上から覗き込みながら言った。  「具合はどうかね。」  私は横になったまま答えた。  「だるいです。頭もいたい。」  軍医は診察を行い、薬を飲ませてからしばらく休養するように言って出て行った。立ち上がれないほどの酷い疲労感と軽い頭痛を感じ、心は不思議なほど落ち着いていた。ブランウェンの死を看取った時と同じ感じだ。  昼頃に、グナエウスが訪ねてきて、昨晩の顛末を聞かせてくれた。私が気を失った後、「ボルボル」の一部が反撃に出て戦いになり、多くを殺害した。生き残った「ボルボル」は明日処刑される。我が軍の被害は私が気を失っただけだ。敵は酒と薬で酩酊し、まともに戦える状態になかったが、激しい狂乱ぶりに兵が怯え、必要以上に殺してしまった。私が倒れていた所には、2体の遺体があった。グナエウスとマルクス百人隊副官が確認したところ、男はデクリウスで女はアダだった。他に赤子のものと思われる頭蓋骨が落ちていた。  他の「ボルボル」を尋問した結果によると、二人は夫婦で頭蓋骨はアダの子だ。夫婦は教団がカルヌントゥムに来てすぐ、第15軍団の退役兵の紹介で入会した。デクリウスは痛み止めの阿片を使い過ぎて入会当初から正気を失いかけていた。アダは儀式の過程で複数の男と交わり妊娠した。子供の父親はわからない。出産して一ヵ月後に嬰児の儀式を行いアダは気が触れた。それ以来、アダは赤子の頭蓋骨を手放さなくなり、いくら罰を与えようと儀式に参加しなくなった。  この話を聞いても何も感じなかった。なにか全く知らない他人の話を聞いているようだ。やはり家族など持たぬ方がよい。必要なのは跡取りだけ。妻を持ちたいと思ったのが間違いだ。私も父に倣い、奴隷女を買おう。母と同じゲルマニア人がいい。息子を産ませて育て終わったら売り払う。余計な財産を持たない方がよい。父もイケニの友人を持ち、義理の娘を持とうとしたのが間違いだった。父が退役したのも、息子の結婚を許す気になったのも心が弱い方に流れたせいだ。その結果、父は自らの命も含め、跡取り以外のすべてを失った。私も失ってばかりいる。軍団以外に居場所を求めてもいけない。私の居場所は軍団だけだ。  退院後は気持ちが軽くなり、ブランウェンの夢も幻も見なくなった。やはりあの幻はスィールの家についていた精霊バンシーだろう。私があの家と関わりを切ったと思い、立ち去ったのかもしれない。アダの夢も幻を見ないのが不思議でならなかった。アダには精霊がついていないのだろうか、アダの神は精霊の存在を許さないのだろうか、それとも私のアダに対する思いは偽りだったのだろうか。しばらく思い巡らせていたが、どうでもよくなり、考えるのをやめてしまった。アダもブランウェンもない。死んだ者に心を向けても意味はない。ただ苦しいだけだ。  出発の数日前、グナエウスとマルクス元軍団長、漁夫王ブロン、私の4人で最初に出会った居酒屋に集まり、パンとワインで出発を祝った。3人は祈りを捧げ、マルクス元軍団長、漁夫王ブロンは処刑された者たちの冥福を祈り、今回の「ボルボル」の処刑を非難した。彼らにこれまでの罪を悔い改めるチャンスを与えるべきだという。グナエウスは神を辱めた者どもに神罰を与えるべきだと、処刑を歓迎していた。  私にはどうでもいいことだ。ただ、グナエウスが姪を、アダを気にする様子がないことに違和感を覚えた。彼らの神のことばかりだ。以前であれば怒りを覚えたかもしれない。今はどこか別の世界の話のように聞こえる。私のアダに対する思いは偽りだったのだろうか、それとも現実を受け入れることができないのだろうか。これも今はどうでもいいことだ。もう妻はいらない。愛する者など求めない。責務を果たすだけだ。跡取りを作ればそれも終わる。  翌日、マルクス元軍団長と漁夫王ブロンをアクイラ大隊長に紹介した。アクイラ大隊長は喜び、マルクス元軍団長を招いて全大隊員を集めて閲兵を行った。漁夫王ブロンはマルクス元軍団長の古い友人だと紹介しておいた。  出発後は何事もなく進んだ。大隊では邪教徒取り締まりの話題でもちきりだった。その中で私は数十名の邪教徒を相手に大立ち回りを演じ、力尽きたことになっていた。ブーディカの乱でブリトン人を何十名も倒して敵を打ち崩した強者、カルヌントゥムの剣術大会のチャンピオン、ベドリアクムの戦いで大隊を救った英雄、戦いの度に新たな逸話が作られる。私は否定も肯定もせず、厳しい表情で言うだけだ。  「君もよき兵たれ。」  ただ、興味本位で話しかけられても疲れるばかりで、部下や同僚と話すことも殆どなくなった。行軍中は暇を見つけては一人で、或いは部下相手に訓練を繰り返した。体を動かしている方が余計な思いに捕らわれなくて気が休まる。  ある日、漁夫王ブロンが近づいてきて話しかけてきた。  「あまり、自分を責めなさるな。全ては神の思し召しです。」  私は腹が立った。彼らは何でも神の思し召しで納得する。私は常に自分の判断で行動し、そして今回は失敗した。全て自分の責任だ。反省なくして次はない。自分の責任を神に転嫁すべきではない。しかし、この怒りを人にぶつけても意味がないと思い、何も言わずに敬礼した。漁夫王ブロンは私の肩に手を置いて言った。  「貴方に神の祝福がありますように。」  漁夫王ブロンが去った後、別の考えが浮かんできた。私は本当に自分の判断で行動してきたのだろうか。私はいつも父の判断で行動していたのではないか。父の作った判断基準を無批判に受け入れて来ただけではなかろうかと。  モグンティアクムに帰還すると、マルクス元軍団長はシキリアへ帰り、漁夫王ブロンは退役兵リキアスと落ち合い、ブリタニアへ旅立った。
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