最後の夜

2/3

22人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
この日の彼は更に甘く優しくて、激しかった。 壊れ物を扱うみたいに触ってきたかと思えば貪りつかれる。 優しくて甘いキスだと思えば噛み付かれた。 そして、私が一番驚いたのは。 「はぁ……ちょっと、いい?」 「んっ、……な、なに……?………………ッ!?」 私の首に吸い付いたかと思ったら小さな痛みが走った。 ……彼が、私にキスマークをつけてくれた。 今まで一度だってなかった嬉しい出来事に涙が出そうだった。 でも、私は、知っている。 彼が、明後日結婚してしまうこと。 相手は、彼と同じで大企業の令嬢。 政略結婚ではないかと、ニュースのゲストが話していた。 結婚してしまえば、もうこんな関係は断ち切らなければならない。 だから、最後に、また私と体を繋げてくれたのだろう。 仕方ない、彼と私はもともと生きる世界が違う。 そう思っていても切なさがこみあげて、うつぶせの体勢の私は、嬌声の影で泣いた。 彼と行為をしている間は、彼も私と同じ人間なんだ、触れられるんだ。 だがもうこの関係も終わる。 今夜は、いつもより長く甘い夜だった。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加