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この日の彼は更に甘く優しくて、激しかった。
壊れ物を扱うみたいに触ってきたかと思えば貪りつかれる。
優しくて甘いキスだと思えば噛み付かれた。
そして、私が一番驚いたのは。
「はぁ……ちょっと、いい?」
「んっ、……な、なに……?………………ッ!?」
私の首に吸い付いたかと思ったら小さな痛みが走った。
……彼が、私にキスマークをつけてくれた。
今まで一度だってなかった嬉しい出来事に涙が出そうだった。
でも、私は、知っている。
彼が、明後日結婚してしまうこと。
相手は、彼と同じで大企業の令嬢。
政略結婚ではないかと、ニュースのゲストが話していた。
結婚してしまえば、もうこんな関係は断ち切らなければならない。
だから、最後に、また私と体を繋げてくれたのだろう。
仕方ない、彼と私はもともと生きる世界が違う。
そう思っていても切なさがこみあげて、うつぶせの体勢の私は、嬌声の影で泣いた。
彼と行為をしている間は、彼も私と同じ人間なんだ、触れられるんだ。
だがもうこの関係も終わる。
今夜は、いつもより長く甘い夜だった。
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