最後の夜

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彼と行為が終わり、シャワーを浴びてきた私。 「体大丈夫?」 こんな風に彼から話しかけられることも、彼を見ることすらもうないのかもしれない。 「ええ、大丈夫よ。ありがとう」 彼に対して初めて言ったありがとう、の言葉に彼は驚いた様子だった。 でもその表情はすぐに消え失せる。 やがて、小さな、小さな声が聞こえた。 「……もう、会えないんだ」 「……」 「この関係は終わりにしよう」 ……いつか、いつか言われるだろうと思っていた言葉。 いつ言われてもいいように彼と私の関係が変わることに期待しないでいたけど、いざ別れを告げられるとつらい。 「そう。……好きな人ができたの?」 「結婚、するんだ」 ……知ってるよ。 「まあ、婚約者がいたのに私とこんな関係持ってたの?まあ私だけじゃなくて他にも大勢いるだろうけど。立派な浮気じゃない」 普段はこんなぺらぺらと喋らない。 でも、黙ってしまえば泣きそうだったから、口を動かす。 「……君しかいないよ」 ……え? 「こういう関係は、君しかいない」 彼の言葉をゆっくりと飲み込む。 私しかいないって。 彼は他の女の子とかとも体を重ねていたんじゃないの? 「でも、確かにそうだね、立派な浮気だ。これからは奥さんに一途に生きるよ」 苦しそうな、切ない表情を浮かべる彼。 なんで、そんな顔するの。 結婚したいって思う、奥さんを愛してるような顔じゃないじゃない。 私の目から涙がこぼれ落ちる。 でも部屋の電気が着いてなかったので、それを気付かれることはなかった。 「今までありがとう。ごめんね」 なんでありがとうなんて言うのよ。 冷たくばっさりこの関係を断ち切ってくれたらよかったのに。 「……私こそ。幸せになってね」 「……うん」 たとえ、政略結婚で、奥さんになる子を心から愛していなくても。 これからの彼の世界、恨まれることも裏切られることがあっても。 ……奥さんから愛されなくても。 私だけが、本当の彼を知ってる。 私だけは、本当の彼を愛してる。 どうか、幸せになってください。 私の愛が報われるように……。
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