笑顔

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 「ひっ、ぃ...いた、ぁ...ッ、やめ、嫌だ、ぁ...」  それはまるで体を貫かれるような痛み。自身の狭い尻の穴を広げ、中を犯すのは翼の昂ったものだった。  痛いと叫んでも、やめてくれと請うても、翼は口を利くことなく力ずくで駿の抵抗を押さえ込み、そして犯し続けた。  瞼を開ければ、自分に覆い被さる男の顔が視界に写る。額から流れた汗は頬を流れ、蒸気した顔は快感に染まっていた。しかし、どこか哀愁の漂うその姿に被害者であるはずの駿の心は酷く傷んだ。  早まる律動。駿は飛びそうになる意識の中、必死に考えた。どうして自分は今、このような状況になってしまったのかと。  そうして、ここに至るまでのことを走馬灯のように走らせた。  ——  ————  ——————  「俺、彼女ができたんだ」  そう、翼に告げるが、帰ってくるのは隠すことのない動揺だけだった。  「だからさ、お前もいい人見つけろよ」  有無を言わせない、一方的な言葉。それだけ言うと、駿はその場を去ろうと翼に背を向けた。  もう、堪えられなかったのだ。ひたむきな愛情に。どんなに冷たくしても変わることのない愛情に。  季節は冬。翼と駿との間に決定的な亀裂が入ってから早数か月。駿は複雑な心持の中、翼と共に学校生活を送っていた。翼が未だに自身に好意を寄せてくれていたことには気が付いていた。  — そして駿もまた、未だに翼への恋慕を失うことが出来ずにいた。  しかし、それは“今”の翼ではなく“前”の翼に、だ。  翼を見るたびに、昔の翼との思い出を思いだして苦しくなった。“前”とは違う雰囲気、話し方、そして笑い方。全てに拒絶反応が出た。目の前にいるのは翼であって、翼ではないと。顔がそっくりな別人物だ、と。  自分の知っている翼ではない。...———翼を返してくれと、何度思ったことか。  自身の罪を棚に上げ、駿はそんな八つ当たりにも似た激しい感情を持っていた。だからこのままではいけないと。翼と距離を置こうと思った。  「...ッ、何だよ...っ、」  突然掴まれたのは、自身の腕。振り返れば、こちらを見つめる2つの瞳と目が合った。言葉は何もない、無言の圧力が酷く息苦しかった。  「もう、いい加減解放してくれよ。辛いんだ。お前と一緒にいるのが辛いんだよ」  俯き、重い言葉を吐き出せば腕を掴む手の力がピクリと強まった。  好きな相手と一緒にいるはずなのに、見ず知らずの人間といるような感覚が辛かった。彼女だってできてない。翼と一緒にいるという苦痛から逃れるためについた、自分勝手な嘘だ。  そう言えば、翼もあきらめ、そして自分自身もこの複雑な悩みをなくすことが出来ると思った。  とにかく、駿は翼と距離を置きたかった。  「どうして“今”の俺を見てくれないんだ。一度も...一度も見てくれない。俺は翼だよ、それ以外の何者でもない」  「...っ、」  振り絞って出したような、その言葉に駿が応えることはなかった。否、できなかった。  改めて翼にそう言われ、自身の行動の冷徹さがずしりと体にのしかかる。  「お前は、翼じゃない...っ、」  そうして、追い詰められた駿の口から出た言葉は翼の心を壊した。  そこからの流れは早かった。暗い瞳をした翼は、無理矢理駿を押し倒し、一途な心を歪ませた。
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