聞かせてほしい、その耳を穿つ声を

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「あ、わたし子供が産めないんだよね」 さらっと言われたその一言は、さらっと俺の耳を通り過ぎることはなかった。 「……そーなんだ」 「うん」 あっちこっちに散らかった言葉を探すように、目がテーブルの周りをせわしなく走り回る。見えやしないのはわかっているのに。 「ごめん。なんか」 「いーよ。慣れた」 別に悪いこと聞いた訳でもないしね、と笑う彼女の目が途端に陰ってみえた。 「オムライス、冷めるよ」 「あ、うん」 衣於吏さんに笑いながら指をさされて、三分の一程残っていた黄色いかたまりを口の中に詰め込む。決して量が多い訳でもないのに、なかなか無くならないし、飲み込み辛かった。
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