14人が本棚に入れています
本棚に追加
/24ページ
俺は知っていた。
彼女に子どもがいないことを。
馬鹿でも気付く。帰宅を急いだことも無ければ、流行りの子ども向けアニメも知らない。
そして何よりも、自分と同じ年頃の女性が子どもを連れてくると、俺たちに接客を一任してキッチンに引っ込むんだ。
さすがにやむを得ないときは多少我慢はしているだろうが、嘘がつけない人だから露骨に苦笑いしていることは想像が易しい。
「あー……馬鹿やった……」
雨音で聞こえないのにかこつけて独り言をぼやく。
「?!」
歩道に紙切れみたいなものが落ちていると思ってたら、自転車のタイヤがそれを巻き込んで、俺は滑って転んでしまう。
「いってぇ!」
口の端は痛ぇしカバンは吹き飛ばされて泥まみれだし、踏んだり蹴ったりだ。
……天罰か。
最初のコメントを投稿しよう!