聞かせてほしい、その耳を穿つ声を

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 気絶したように眠り込み、自然のままに目を開けたら外は真っ暗だった。 「丸一日寝てたのか……」  目覚まし時計で時間を確認し、スマホを探す。手の届くところにないので起き上がったが、朝身体をむしばんでいたダルさは消えていた。  ベッドのすぐ横に落ちていたスマホを拾うと、メッセージが来ている。機械的にメルマガに既読をつけていたが、一つだけ文章の種類が違う。 「大丈夫? お母さんから連絡あったよ! 今日はゆっくり休んでもね!」  文章がおかしいのは、よく見ずに打つからだろう。いかにもあの人らしい。  もう、営業時間は終わった頃だ。もう既読をつけてしまった手前、何か返事をしないといけない。 「今日は休んでしまってすみませんでした。おかげさまで良くなりました。今後ないように気をつけます」  返信が来たのは10分後だった。 「よかったです! 明後日はシフト入ってるけど無理しないようにね!」  スマホを見上げて独り言を呟く。 「あー……よかった……」  スマホの画面じゃ、あの人の感情なんて見えねーけどな。
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