聞かせてほしい、その耳を穿つ声を

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 コーヒーが入ったマグカップを二つ持って来た彼女が椅子に腰掛ける。今日の豆はコナだ。酸味があるから実はあまり俺の好みではない。 「……旦那がさ」  左手に顎を乗せて悩ましそうな顔をして、本当にこの人はブレない。 「うん」 「最近帰りがやけに遅いから、なんでって問い詰めたの。しらばっくれようとしたけど、けっこうしつこく」  聞き返す前に、俺は一度深呼吸をする。続く言葉が、何であっても良いように。 「……なんだった?」 「お義母さんが怪我したらしくて、ずっと実家にお見舞い行ってたの。それ、なんで言ってくれないの? って聞いたら『気にするだろ?』って。私あの人にとってそんなもんなんだって思ったら、ムカついて、情けなくて」  彼女はコーヒーにミルクを入れてクルクル掻き回しているだけで、その後の言葉がなかなか出てこない。急ぐことでもないので大人しく待っていると、ようやく薄茶色のコーヒーからスプーンを引き抜いて両手を膝の上に置いた。
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