聞かせてほしい、その耳を穿つ声を

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「本当に、大っ嫌いなのかよ?」  顔を上げた彼女は2、3回首を横に振った。 「大好き」  本当に、この人は予想を裏切ったことがない。 「……じゃあやることは一つじゃん。早く帰れば」  投げやりに言い捨てると、ようやく彼女が歯を見せた。 「……そーだね。聞いてくれてありがと」  湯気の消えたコーヒーを啜り、「さすが私。冷めてもおいし!」と軽口を叩き始めたので俺も「アーハイハイ」と返しながらマグカップを掴む。ぬるくなったコーヒーを飲みながら、やっぱり酸っぱいなと苦笑した。  じゃあ俺にすれば? と言わなかった自分に驚いている。元々キレイな人間じゃない。彼女が幸せであれば何でもいいなんて全く思ってない。そんな俺の、僅かなチャンスだったかもしれないのに。  おおかた俺がゴタクを並べなくても勝手に仲直りするんだろうが、俺も捨てたものじゃないらしい。
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