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「何急に! 何この花! ダリア? ベコニア?」
適当な花の名を並べながら、「かわいーねー」とそれなりに目を細めて喜んでいる。この様子じゃ一生気付かないだろう。
「何だっけ、忘れちゃった」
正解はゴデチアだ。俺も花言葉はおろかこんなイカツイ名前の花知らなかったから人のことは言えない。
「えーなにー? 誕生日じゃないのにー!」と一人で騒いでいた衣於吏さんが、花束の上から顔を出して俺を見上げた。
「ありがとう!」
見惚れてしまう癖はいい加減改めるべきだろう。俺は薄ピンクのゴデチアに目を向けた後、「お慕いしています」と心の中で唱えながら口角を上げた。
「どーいたしまして」
花のような笑顔とは、目の前の花のように艶やかなものを指すのだろうか。彼女の笑顔は少し違うなと思う。
「ねぇねぇ聞いてよ! 今日旦那がさ!」
今日も口の端が少し上がっている。この表情は多分、彼女の旦那も見れないんだろう。俺だけの、特権。
「ハイハイ」
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