聞かせてほしい、その耳を穿つ声を

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「衣於吏さん、チーズのドリア一つ」 「はーい」 さっきより、声のトーンが上がった。 「ちょっと待っててくださいねー!」 いそいそとキッチンに戻る彼女が跳ねた声を残していく。その後ろ姿を見送りながら、よしえバァさんがくすっと声を漏らした。 「あとで、コーヒーもお願いね」 「伝えときます」 キッチンに伝票を渡しに行くと、もう彼女はドリアのタネをグラタン皿に流している。 「コーヒーも、食後に」 「わかった」 短く返事をして、あとはグラタン皿に集中。その目はキラキラと輝いている。 これだから、彼女が好きなのをやめられないんだ。
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