聞かせてほしい、その耳を穿つ声を

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待ってる間ヒマだから、よしえバァさんの正面の椅子に腰掛ける。本を読んでいたバァさんが目を上げた。 「あら? おサボりしてていいのかい」 「待機中。今日はお客さん来ないから」 衣於吏さんだって時々クロスワードパズルとかやってる。全然解けてないけど。 「あらあら、わるい子ねぇ」 「何その本?」 「あぁこれ、花言葉の辞典だって。本屋さんで見かけて絵が綺麗だから買ったの」 本を渡してくれたので適当にページをめくってみる。俺は花好きでもなんでもないが、多少面白い。 「ふーん……バラは愛情、そのままだな」 「色によって違うんだよ。白は清純、ピンクは愛の誓いってね」 「いちいち意味なんて気にして贈ってんのかね、世の人達は」 「死んだじいさんはトルコキキョウを持ってプロポーズしてくれたのよ」 「へー、意味は?」 「永遠の愛」 バァさんの皺々の手に光る少し傷が入った指輪、彼は人生をもって証明してくれたらしい。 「いいジィさんだったじゃねーか」
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