聞かせてほしい、その耳を穿つ声を

8/24

14人が本棚に入れています
本棚に追加
/24ページ
よしえバァさんがタクシーで帰った後、衣於吏さんがニヤっと似合わない不敵な顔をする。 「今日はラッキーだったね。よしえおばあちゃん」 「なんで」 「こーまくんといっぱいお喋りできたから」 「あーはい」 こんなチャラいガキは嫌いそうなのに不思議なバァさんだ。 「よしえおばあちゃん、いつも都築くんの出勤日聞いて帰ってるんだよ、知ってた?」 「……知らんかった」 だって俺には直接聞かないし。 「都築くんのファンはけっこう多い」 彼女がポンと俺の肩に手を置いて、上目遣いで顔を覗き込む。 「さぁ、今日は大掃除だ! エアコンのフィルターお願いしていい?」 「……はいはい何でもどーぞ」 彼女のこういう所が、いつも俺を悩ませる。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加