188人が本棚に入れています
本棚に追加
マカオでジャンプ
「なんで私だったの?」
「素の凛がおもしろかったから」
「面白い?」
「みんなから頼られる学級委員は実はすごい泣き虫で、隙を見せずにしっかり頑張ってる弁護士先生は実は穴だらけで。色気ないし、女子力高そうに見えないし。恋愛偏差値、低いし。でもその素の凛を知ってるのは俺だけってっていう優越感」
「なんか、私へのダメ出しみたいになってない?」
「よく見つけたなぁって思うんだよね。一般受けするわかりやすさが無いんだよ、凜は。かなり無理してこじ開けないと見せてくれないからね。それを発見した俺って、すごくない?」
「質問の答えになってません」
湊馬はそっぽを向いた私の頬に優しくキスをする。こんな微笑み方が出来るひとだったんだね。
「俺、気に入ったものは手放さないんだ。覚悟しておいて」
あっ、いつもの口角だけ上がるシニカルな笑みに変わった。
「意味わかんないし」
次は私達の番。なんか、私にだけいろんなハーネスとか金具が装着されてない?湊馬もやるよね。
「私が先なの?」
「高校の頃、あんなに飛び降りたがってたじゃん?屋上から」
「はっ?」
「だから世界一のバンジージャンプ予約したんだし、凜だけのために」
「湊馬はやらないの?」
「もちろん、やらない。なんで東京タワーより高いマカオタワーから飛び降りる必要があるのさ」
湊馬は「いってらっしゃい」といでも言うように片手を上げた。
すごい勢いで下降しながら、飛び降りるのはこれで最後にしようと強く思った。
最初のコメントを投稿しよう!