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もう二度と自分が欲しいと思ったことを口に出して言っちゃいけないんだ。幼いながらも、私は私に誓ったんだ。
でも、もう限界です。私を自由にしてください。
学校ではいつだって皆から好かれるように頑張ってきた。それで頼りにされて、そして周りの期待にも応えてきた。親は妹の世話でいっぱいいっぱいで、私のことまで手が回らない。でも、その原因を作ったのは私の「きょうだいが欲しい」の一言から始まっている。
息が詰まる。
高校2年のとき、塾の帰りにふと家に帰るのを止めちゃおうかなって思った時があって。家に帰りたくないとは、それまでもよく思ってたけど。その日は可愛がっていた愛犬のクロが死んだ日で。そもそもクロは人を噛んだからって、それが原因で保健所に連れていかれて殺処分されちゃったんだけど。私がちゃんと守れなかったから。噛みついた相手というのが妹で。クロは私にしか懐かず、それを気に入らなかった妹がわざとクロを怒らせた。
そんなことをふと考えちゃったのがいけなかったんだと思う。気が付いたら、繁華街をフラフラ歩いてて、さすがに、ちょっとヤバいかなって思って、駅の方に引き返すとき、人通りの少ない道に迷いこんじゃって。その時、世良君に声を掛けらた。
「あれ、同じ学校の人?名前はえっと。。。」
私は聞こえなかったふりをして、足早に彼の傍らを走り過ぎた。
後でわかったことだけど、そこは所謂ホテル街に続く道で。
多分、動揺していたんだと思う。そしたら、柄の悪そうな大学生ぐらいのグループの一人に私のカバンが当たってしまって。
「いてぇ」
グループの人たちに囲まれる。これは良くない状況。
「人にぶつかっておいてスルーはないんじゃない?」
「。。。ごめんなさい」
やっと言えた一言はとても小さい声で。。。
「よく聞こえないなぁ」
グループに囲まれた輪が徐々に小さくなっていく。
距離が狭まる。皆、身長高くて、威圧感すごくて。逃げるに逃げられないとき、また世良君の声がした。
「俺のツレに何か用ですか?」
世良君の噂は、こんな私でも聞きかじってて。中学の時、暴力沙汰で停学になったとか、親戚に反社の人がいるからクスリも手に入るらしいとかなんとか。こんな時にそんなことが思い出されて。
「俺たちが関心があるのはこのJKだけ、坊やは興味ねえんだよ」
グループの中の一番ガタイの良さそうな人が世良君にいきなり殴り掛かる。
世良君はそれをかわすと同時に、相手の下腹に一発を決めていた。
殴られた人の体から嫌な音がした。
「続ける?」
世良君が制服の皺を伸ばしながら、鞄を持って立ち上がった。
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