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湊馬のクリニックに行ってみました
最近、仕事で出張に行かなければならないケースが増えてきている。2,3日ならまだいい。事務所からすればアメリカの弁護士資格まで取らせたんだから、使わない手はないっていう事情も分かる。でも、ノアはまだ小さくて。やっとギプスも外れて、リハビリも順調で元気にはなってくれたけど。
もちろん、出張に連れて行くわけにいかないから、シッターさんとかヘルプを外部にいろいろ頼んだりしてるんだけど、今回ばかりは、やり繰りがどうしても上手くいかなくて。愛理だって仕事あるし。にっちもさっちもいかなくなって、とうとう両親に頼むことになってしまった。いきなり預けるのは無理だから、事前に保育園の送迎や一緒に遊んでもらったりと慣れさせなきゃいけなくて。いろんなわだかまりが無いわけじゃないのだけど。
ノアのことは両親も純粋に可愛いらしく、ノアもじぃじ、ばぁばって呼び始めて。今回だけは甘えさえてもらうことにした。
今回の海外出張は8日間。週末も時差の関係があって1日だけかかってしまう。毎晩、ノアにはビデオ電話で様子を確認する。どうにか元気そう。
安心して帰国の途についた。空港には、ノアを連れた湊馬が空港まで迎えに来てくれていた。『なんで湊馬がお迎え?』とは思ったけど、せっかく来てくれたから断るのも悪くて、結局、送ってもらって。
でも、後日、私の出張の5日目辺りで張り切り過ぎた母が右足をひどく捻挫してしまい、湊馬の病院にかかっていたことが判明した。事態はそこで終わりではなくて、事情を聞いた湊馬は後半3日間、仕事終わりにノアの面倒をみてくれていたらしいことまで発覚。だから、その流れでノアを連れて空港までお迎えにきてくれたらしい。
ノアの「せんせいのおうち」発言がリークの直接の要因。ホントはみんなで内緒にしておこうと口裏を合わせていたらしいけど、子供には無理だったみたい。私が嫌がるからと、ノアはビデオ電話の時は実家にいたようで、結局、湊馬の所に2泊もお世話になったらしい。
「これ、お納め頂けますでしょうか?」
湊馬の診療のタイミングを見ながら、受付も担当している看護師さんに世良先生に渡したいものがある旨、伝えていた。
「ノアが来てたの、バレた感じ?待てる?」
受付に顔を出してくれた湊馬はヨソユキの顔。ちょっとだけ照れくさそうな感じ?で応対してくれる。そんな訳ないか。湊馬の表情を読み間違えたらしい。
多分、好みが変わってなければ大丈夫なはずだけど。彼の好きなはずの高めのお酒を携えて、彼が引き継いでいるという病院を訪れたのは、この経緯を知った1週間後だった。
「もう少しで終わるから、待てる?あとで食事でもどう?今日、ノアは?」
いつもと変わらない湊馬の様子にホッとする。
今夜は実家にノアを預けてきた。湊馬の病院、いつ終わるかわからなかったし。母としても、自分のせいでノアの面倒を押し付けることになってしまった世良先生にきちんとお礼を言ってきて欲しかったらしい。
「ノアはとりあえず実家にお願いしてきました」
私がそう答えると、世良先生は診療室に戻っていった。
白衣を着ている湊馬が一番好きかな。ふと思ってしまった。
何、考えてるんだか。
私は待合室の椅子に大人しく座り直した。
最後の患者を診終わって、クリニックを閉めたのは、湊馬にお礼の品を渡してから1時間はたっていた。結構、はやってるのかな。こうゆうクリニックも地元に根差していていいとは思うけど、でも、湊馬はもっと重篤な患者さんの手術とか担当した方が、いろんな命救えるんじゃないかと思ってしまった。
余計なお世話だけど。
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