イッポン

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「これ、私のミッションだから。これ、完遂しないと帰れないんだよね。それに考えてみなよ、凜、これから死ぬまで一人でいたい?ノア、恋人できたらそっちいっちゃうよ。老後の孤独死、私もシャレにならないけど」 「愛理さんには僕がいますよ。僕の方が年下だから、平均寿命考えても、一人でいる時間少なくて済みますって」 頑張れ、矢島君、応援してるよぉ~。こっちじゃなくて、そっちを先に片付けようよ。矢島君、愛理に何度もプロポーズしているらしいし。 「え~い、さっきからうるさい。矢島もどっか行ってきて」 あぁ、またしょげちゃったよ、この大型犬。なんやかんやで仲、いいよね。 「さっさと片付けちゃおうか、凜。どうせ、そうこれから大した出会いなんてないし、もう腐れ縁だと思って、尻まくれや。女は度胸」 その美しいお顔が何を言う。『尻まくれ』はなくないか。だいぶ、面倒くさくなってるよね。 「なんで、愛理は湊馬押しなの?素朴な疑問なんだけど。だって、湊馬と愛理の方が実はお似合いじゃないかって思うんだよね」 お座りを指示されていた大型犬が立ち上がった。 「愛理さんは僕のモノです」 「はぁ?とりあえず矢島はオスワリ継続。ステイね。動くな。無駄にデカいんだから目障り。世良湊馬はね、読みやすいのよ、私と似てるから。凜のこと、好きになる気持ちもわかるし、大切にしてる気持ちも手に取るようにわかるから。組みやすいの。だからね、凜、私と世良湊馬からは逃げられないの。これは運命と割り切る。ちゃんと大事にされるから。はい、さっさとサインして。どうしても書かないなら、私が凜のサイン偽造するわよ。その手の、私、結構得意だから」 公文書偽造ではないですか?婚姻届けって公文書?いやいや有印私文書。仕事モードまで入ってきた。何、やってる私? 「私でいいのかな?」 そもそもの疑問をぶつけてみる。だって、私、結婚したことあるし、いわゆるコブつきですけど。 もともと目が大きい愛理の目が一段と大きくなった。 「そこかい?」 愛理は頭を抱え込んだ。 「さっさと書かないと、ノア返してあげない」 切替のない早い愛理は次の手を打ってくる。 「ここにサインしないんだったら、そうね、ノアを私の息子ちゃんにしちゃおうかな」 スチュアート家の次は及川家?ホントに勘弁してください。
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