どうしてこうなった?

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どうしてこうなった?

どうしてこうなった? 私は今、矢島と矢島の両親、ウチの両親と一緒に食事をしている。いわゆる顔合わせ。この会って何?私は振袖まで着せられているんだけど。35歳ですけど。許されるんだろうか? どうしても、凜を世良湊馬と結婚させたかった。 世良湊馬も頑張ったと思う。ちょっと気弱になっていた凜とノアを殆ど拉致同然に自分の家に住まわせて。でも凜はプロポーズを断ってきたし、世良湊馬の方も一緒に住めるだけでもとか弱気モードに突入してたから、ついつい私が請け負ってしまった。絶対に凜に婚姻届けのサインをさせるって。私の勝利の方程式、途中までは絶対、私の思惑通り。凜が逃げられないところまで追い込んでいたはず。 かえすがえすも、あの時、矢島を同行させていたのが失敗だった。凜があまりにも抵抗するようだったら、凜を矢島に抑え込ませて、本気で凜のサインを偽造するつもりだったから。凜の署名なんて、私の手元にいくつでもあったから、どうにでもなる。偽造だと訴えようが、そんなのどうにでもなる。1度でも婚姻届を提出したという事実を作ってしまえば、凜のしょうもない意地なんて、抑え込める。なのに、なんで? 他に方法がなかったから?本当にそう? 凜は私が書き始めるまで、絶対に手を動かそうとしなかったし、私が住所を書くと住所まで、名前を書く時だって、じっと私を見ていた。多分、根負け。私を見ていたのは凜だけじゃない、矢島もずっと見ていた。4つの目に見つめられて、今までにないプレッシャーを感じた。どんなプレゼンでも失敗したことのない、この及川愛理が。婚姻届を書き上げると、矢島はその書類を強奪するようにクリアファイルに仕舞い込んだ。それから電話を何本かかけていた。その日の内に、証人欄には矢島君の親の名前と間もなく帰ってきた世良湊馬の名前が書き込まれ、夜間ポストに投函されたらしい。凜は苗字がいつ変わるか微妙なタイミングだったしね。 凜の婚姻届は、私達が帰った後、ノアと世良君の3人で区役所の休日受付の窓口に提出しに行ったらしい。結局、仲良しなんだから。 さて、どうしたもんかな。矢島はちょっと心配そうに私の方を見ている。婚姻届まで出しておいて、その自信のなさはどうなの?私は注がれていたグラスのビールを飲み干してしまった。
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