わかってる

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わかってる

最近、やたらと仕事が忙しい。 ノアとの時間もとりたいのに、ホントに24時間じゃ足らない。 湊馬にも負担をかけていると思う。家事全般、ノアの世話。彼にとって、私といることのメリットって何だろう?もっと彼だけを見てくれる人の方がいいんじゃないかと思ってしまう。きっとそのうち、私の方が捨てられる。 湊馬は今のままでいいんだろうか? ホントに病院を継がなくても後悔はないんだろうか。 異母弟が将来的に継ぐとか言ってたけど、あまり実家のことについては話してくれないから。私との結婚だって、あの理事長のお父さんのことだから快く思っていないのは想像できるし。 湊馬と別れなければいけなかったとき、最後にちゃんと話したいと思ってた。自分の気持ちをちゃんと伝えた覚えがほとんどなくて、もっときちんと伝えていれば別れなくて済んだのかもしれないと何度も思った。幸い、アメリカに行ってからは周りに追いつくので精一杯で、そんな感情に蓋をするのも難しいことではなかったけど。少しだけ余裕が出来て、周りが見えるようになったころ、そこにはジョーイがいた。湊馬のことを考えなかったわけではないけど、他人のモノになってしまった彼を奪い返す度胸もなかった私は、誰かに愛されたかったのだと思う。もしそれが叶わないのなら、愛する対象が欲しかった。だから、きっと子供が欲しいなんて思ったのかもしれない。ジョーイとは寂しい魂が呼び合った感じだったのかもしれない。でもそれは予想以上で、ジェットコースターにでも乗ってしまったのかと思うぐらい、毎日がスピーディーで、あっけなく終わってしまった。悲しすぎると涙もでないんだと知った。泣けたら少しは楽になるのかなって。ノアを育てなきゃいけない、ずっと肩に力が入りっぱなし。そんな時にノアが事故に遭った。私のせいだ、私がちゃんとしていなかったから。助けてほしかった。誰かにそばにいてほしかった。消したはずの連絡先。でも、消すまでに何度も見つめた連絡先。私の記憶の引き出しはちゃんと、その数字を覚えていた。懐かしい声。縋りつきたくなる気持ちを私は抑えられなかった。
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