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高校2年になって、私は初めて世良君と同じクラスになったんだ。一応、進学クラスで学年で頭のいい人たちが集まるクラス。高校最後の部活、受験勉強といろいろ忙しくなるから誰も引き受けたがらなかった学級委員を押し付けられて。まっ、そうでもしてなきゃ、世良君が私の名前を憶えてるわけないけど。
なんとなく、ホテル街で助けてもらってから少し話したりするようになった。屋上は滅多に生徒が来なかったから、私一人しかいないって思いこんでたけど、私の死角になる受水槽の上で世良君はよく昼寝してたらしい。
話しかけられれば、ちょっと嬉しくなってる自分を自覚してた。
でもね、私はちゃんと決めていたことがある。好きになっちゃダメ。昔から私が好きになる男の子は、後から必ず登場する妹を好きになる。そして男の子は当然のように妹を選ぶ。先に私を好きだと告白してくれた男の子でさえも、いつもそう。
失敗から学べ。
世良君はいつからか私を下の名前で呼ぶようになった。私は二人でいるときだけ「湊馬」と呼んだ。
そしてやっぱり妹が現れた。
あの日以来、湊馬と二人では会っていない。
高校3年になって、理系と文系でもクラスが分かれ、湊馬とは会う機会も減っていった。屋上にもネックレスを返したあの日以来行っていない。
高校3年の1年は早い。
湊馬は難関医学部にあっさり現役合格。反社の親戚云々は、実家が結構大きな病院で、病院やってればいろんな薬扱うよね。ただそれだけで。噂なんていつも適当。
私は補欠入学で関西の大学に進学を決めた。
それでも卒業式の時、湊馬と久しぶりに話をした。校門のところで、丁度鉢合わせしてしまったから。
「世良君、医学部、すごいね。合格おめでとう」
それが私に言える精一杯で。もう湊馬とは呼べないよね。湊馬は一瞬、険のある表情をしたような気がしたけど、すぐにいつもの表情に戻ってた。
「関西の大学だって?もう、東京戻らないつもり?」
私の進学先知ってるんだね。
「多分」
ちょっと沈黙したあと、湊馬は友達に呼ばれた。
「じゃ、また」
久しぶりにみる口角があがる、それでいてシニカルな笑顔。それがよく似合う。
「また」はないよね。
私の苦い恋愛はそこで終わった。
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