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湊馬は優しかった。多分、今までで一番に。動揺する私を落ち着かせ、寄り添ってくれた。こんな湊馬は初めてで、思いっきり甘えたくもなった。
『世良先生』
距離を取らないと、私は二度と立ち上がれなくなる。必死だった。
湊馬はそう呼ばれるたびに、見るからに不機嫌そうになったけど、私が私というポジションを維持するためのプライドでもあった。
ノアのことをなぜか可愛がってくれる。神宮司さんとの子供は抱き上げることすらしなかったと聞いた。矢島君からは他人との子供だから当然だろうとは言われたけど。ジョーイは血のつながりがないのがわかってもマシュー君のことは何かと気にかけていたし。一度、聞いたことがあった。
「なんで、ノアの面倒をそんなに見てくれるの?」って。
「凜の子供だから。凜に触れられない分、余計触れたいのかも」
そんな風に言われたら、気持ちがざわつく。でも湊馬は気持ちを押してこない。
『頑張ってるよねぇ。でもあんまり我慢させちゃ、さすがに可哀そうじゃない?いくらダークサイドキャラでも。さすがに同情するわ』
愛理にちょっとだけ、くさされた。
私は左手の薬指の指輪に触れる。
「凜がいいと判断したら、いつでも外していい。幸せになって」
そう言ったジョーイを思い出す。
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