わかってる

2/2
179人が本棚に入れています
本棚に追加
/134ページ
湊馬は優しかった。多分、今までで一番に。動揺する私を落ち着かせ、寄り添ってくれた。こんな湊馬は初めてで、思いっきり甘えたくもなった。 『世良先生』 距離を取らないと、私は二度と立ち上がれなくなる。必死だった。 湊馬はそう呼ばれるたびに、見るからに不機嫌そうになったけど、私が私というポジションを維持するためのプライドでもあった。 ノアのことをなぜか可愛がってくれる。神宮司さんとの子供は抱き上げることすらしなかったと聞いた。矢島君からは他人との子供だから当然だろうとは言われたけど。ジョーイは血のつながりがないのがわかってもマシュー君のことは何かと気にかけていたし。一度、聞いたことがあった。 「なんで、ノアの面倒をそんなに見てくれるの?」って。 「凜の子供だから。凜に触れられない分、余計触れたいのかも」 そんな風に言われたら、気持ちがざわつく。でも湊馬は気持ちを押してこない。 『頑張ってるよねぇ。でもあんまり我慢させちゃ、さすがに可哀そうじゃない?いくらダークサイドキャラでも。さすがに同情するわ』 愛理にちょっとだけ、くさされた。 私は左手の薬指の指輪に触れる。 「凜がいいと判断したら、いつでも外していい。幸せになって」 そう言ったジョーイを思い出す。
/134ページ

最初のコメントを投稿しよう!