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そして今、私の目の前には白衣を着ていない世良湊馬が座って生ビールを美味しそうに飲んでいる。
あの後、湊馬の乗るタクシーに会社前で拾ってもらい、ちょっとオシャレな和風居酒屋の個室にいたりする。
とりあえず乾杯の後、つまみをいくつかオーダーし、現在に至る。
「弁護士先生か。スゴイね、凜ちゃん」
「嫌味ですか?」
「素直にほめてる」
「湊馬から素直って、あっ、ゴメン。。。なさい。世良先生だった」
「湊馬でいいよ。俺も凜って呼ぶから。安心していいよ、家族の前では『凜さん』にしておいてあげる」
多分、もてるんだろうな。駄々洩れですよ、男の色気が。。。。
「ところで、凜は不倫男と別れたわけ?だから東京戻ったの?」
ビールを飲み下した後でよかった。絶対、噴き出すところだった。
不倫男って、これ、絶対、愛理だよね、リークしたの。
「誰から聞いたの?」
「及川さん」
やっぱり。マジですかぁ、愛理、たのむわぁ~。。。。。久しぶりに会って、この遠慮のない発言。
「LINEのあけおめスタンプを交換した時、及川さんが教えてくれた。年1くらい連絡がある。凜の近況とともに」
言葉が出ない。
愛理、怒ってたからな、私の不倫。。。。
会社の上司と付き合ってるって、それが妻帯者だって、付き合い始めて1年くらいたった後で白状したら、相手に結婚する気がないなら別れろと言われた。結婚願望のない私は都合のいい女になっちゃうからって。
自分に何も言わずに1年も付き合っておいて、これからもズルズル付き合うぐらいなら東京に戻れと。そしたらいい男紹介するからって。基本、愛理は恋愛自由主義だけど、たまに小姑のようにうるさいときがある。別れるには物理的に距離を置くのが常道だって。
学生の頃、愛理と恋バナの話になって、高校時代の、湊馬との話をしてしまった。私の場合、それしかなかったから。だいぶアルコール入ってたし。結構、根掘り葉掘り聞かれて。一度、湊馬に会ってみたいと言われたことがあった。でも、本当に会いに行くとかないだろうと思ってたけど。
「世良」って苗字がちょっと珍しいのと、湊馬と同じ大学にコネ(絶対、合コンだと思うんだけど)を見つけた愛理は、湊馬に会うことに成功したらしいことは本人から聞いてたけど。。。。何なの、LINEで連絡って。嫌な予感しかしない。
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