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「高坂、この前、お前の妹っていうのが現れたんだけど・・・」
ほら、もう始まってる。
屋上で柵に腕を載せながら空を見上げてる私に湊馬から声がかかる。
私は聞こえないふりをした。
朝のまだ誰もいない屋上は数少ない私のほっとできる場所。私は何度かこの柵を越えたことがある。そんなことをするようになって何度目かのとき、湊馬に声をかけられた。
「何やってんの?」
その時も慌てたでもなく、普通にそう声をかけてきた。
「ここから飛び降りたら気持ちいいかなって」
「地上に落ちるまで意識あると、微妙かな」
「えっ?」
「後悔よぎっても絶対助からない。落ちてる間じゅう、ずっと後悔しながら落ちていくんだぜ。下、コンクリートだし。落ちた後も惨状だろ、ぐちゃぐちゃじゃない」
死んだ後のことをその時、初めて考えた。そっかぁ、頭も顔もぐちゃぐちゃかぁ。そしたら何か笑えてきた。
「手、貸す?」
「大丈夫」
私は軽く柵を越えてこちら側に戻って来る。だって慣れてるもん。
それから、たまに屋上で二人で話すようになったんだ。
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