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エロ本が運んできた恋?
その日、いつもの面子でマクド帰りに俺の部屋へ集まったのは、ただの習慣だった。土曜日の午前中は部活、昼に弁当を食って、一緒にマクドでシェイクを飲んで俺の部屋でゲームしたり、マンガ読んだり、レンタルDVDを観たりする。
気の合うメンバーは同い年の佐伯翔太と先輩の龍堂要、後輩の多田良和の三人。そこに、俺、中田右京を加えた四人が、我が弱小卓球部の全メンバーなのである。
俺は、自慢じゃないが、こいつらの中で一番背が高い。腹筋も割れているし、男として理想的な体型をしていると、自分では思っている。口の悪い良なんかは、俺のことをウド先輩なんて呼んだりする。失礼極まりない。独活の大木なんかじゃない、俺の高身長と筋肉は実用性に富んでいる。俺より少しだけ背の低い翔を横抱きにすることだって出来る。翔は俺と違って細身なのだ。だが、良を横抱きにしようとは思わない。出来なくはないが、かなり重そうだ。要先輩は小さくて可愛らしい容姿をしているが、性格はとてもキツイ。横抱きにしたりしたら、殴られるだけじゃすまない。きっとボコボコに蹴られる。もしかしたら踏みつけられるかもしれない。恐ろしい。
なんで体型自慢なんかしているかって?
俺は、断じて、女じゃないし、女に見間違えるような外見もしていないってことが言いたかったのだ。
だから、この状況はおかしい。
なんで俺のお尻に、翔の大きいのがはいっちゃっているわけ?
「……うぅ、も、もう、抜いてぇ。翔ぉぉ、なんで、こんなことするんだよぅ……」
情けない。ほんとに情けないけど、俺は翔に泣きを入れた。
「右京が悪いんだろ。あんなエロ本なんかに真っ赤になってわぁわぁ言って、右京のかわいいところ、要先輩と良にばれちゃっただろ。右京は俺のなのに。ほら、ここも俺の形になるまで嵌めてやるから」
翔太の言い分は無茶苦茶だ。確かに、俺はエロ本とかに免疫がないけど。女の裸なんか見たことないけど。だって、父子家庭なのだ。物心ついた時から、女性には縁がなかった。強面な顔面も手伝ってか、女の子とまともに話したこともない。でも、女の子はかわいいと思う。だから、エロ本とか、そういうのを見るのはなんだか恥ずかしいし、後ろめたい気がして、今まで手にしてこなかった。もちろん、同じ理由でエロい動画とかも見たことがない。天然記念物だ、なんて要先輩も良も笑ったけど、翔太は慰めてくれたのに。
俺が初めてエロ本を見ることになったのは、良が悪い。あいつが親父に貰ったとか言ってカバンから取り出してきたから、思わず覗き込んだら、女の子のあそこがアップで写っている写真で、裸の女の子の胸とか、太ももとか、あそことか……、わぁーーーと大声を上げてしまったのは、致し方ないと思うのだ。
「ば、バカ野郎! そんなもの俺の部屋に持ってくるなよ。十八禁だろ! 」
真っ赤になって思わず叫んだ俺を見て、三人とも最初はあっけにとられて、それから大爆笑された。
「初心だねぇ、右京くんは。こんな本くらいでそんなに赤くなっちゃって」
「ウド先輩、童貞丸出しの反応でウケる。天然記念物っすね」
そんな風にバカにされたけど、笑いをおさめた翔は、俺の肩をたたいて慰めてくれた。
「まぁ、右京が免疫ないのは仕方ないって。親父さんしかいないし、その親父さんも海外転勤とかでずっと一人暮らしなんだし」
でも、翔は、要先輩と良が帰っても帰らなかった。
「右京、女の子のこと、もっと知りたくない? 俺が教えてやるよ」
そう言って、俺の肩に手を回した。
「んっ、なんで、キスなんか?」
ベッドに腰かけた俺の顎に手をかけて翔は唇を重ねてきた。
「だって、女の子のこと知りたいんだろ? キスくらい知ってないと、女の子と付き合ったり出来ないだろ」
「んっ、また、ぅわ……」
再びキスされて抗議の声を上げようとしたら、口の中に翔の舌が潜り込んできた。
「むーーー」
止めてくれと言いたいのに言えない。翔の舌は、歯の裏を舐めたり、俺の舌を舐めたり吸ったりする。わけがわからない。これはなんだ? これもキス?
頭がぼーっとしてくる。上手く息ができない。
俺は力の入らない腕で、翔の肩を押した。
「右京、キスの仕方も知らないのな。鼻で息をするんだよ。ほら、もう一回」
翔は嘘つきだ。もう一回なんて、嘘だ。何度も何度も、俺が何も考えられなくなるまでキスされた。
自慰を知らないわけじゃない。
俺だって自慰くらいする。
いつもはそれを握って結構長い時間かけてたたせるのに、キスされただけで、握っているわけでもないのに、ガチガチにたってしまって、俺は恥ずかしくて泣きそうだった。
「右京、気持ちいいだろ? ここ、ガチガチになっているもんな」
翔に指摘されて、顔に血が集まる。翔は、俺のジャージに手をかけて、脱いじゃえよって言った。俺は恥ずかしかったけど、なんでか、翔の言うとおりにしてしまった。
「右京の、綺麗な色だな」
そう言って、翔が俺のそこを咥えたから、俺はますます訳が分からなくなってしまった。
「な、なんで、翔、なんでそんなことするんだよぅ」
「右京、これ咥えたり、舐めたりするの、されたことある? フェラ知ってた? 右京のこれ、フェラするの、俺が初めてだよな? 気持ちいいだろ? 右京はただ感じてればいいからな」
翔は俺が止めてって言っても止めてくれなくて、俺の先走りと翔の唾液で濡れたお尻まで指で触れてきた。
「右京、女の子じゃなくても、ここで気持ちよくなれるって知ってる? 俺が教えてやるよ」
それから、本当に翔は、俺のそこを翔の形になるまで嵌めて、俺の中で、何度も果てた。
俺の中に出されたものの後始末に、翔の長い指を突っ込まれてかき回されて、俺はまた泣かされてしまった。
翔のバカ。
気持ちよくなんかなりたくなかった。
こんなの知ってしまったら、翔なしではいられなくなる。
「右京、俺なしでいられなくなるって? いいだろ。俺はとっくに右京なしじゃいられないんだから。ずっと大事にするから。俺の右京」
強面でガチムチな俺なんかを抱きたがる変態はお前くらいだと、俺は翔に言う。毎度毎度、要先輩や良に嫉妬するのは止めろ。誰も俺なんか狙ってないから。でも、翔の態度は変わらない。俺の周りに嫉妬しては、抱きつぶそうとしてくる。
そんなところも翔らしいのかもしれない。
でも俺は、なんで翔が俺なんかに拘るのか、理解できていなかったのだ。
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