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教会の鐘が高らかに鳴り響くと、6月の曇り空を吹き飛ばしてしまうような美しい花嫁が登場した。
その眩しい美しさに、気まぐれな梅雨の太陽が顔を見せる。
一瞬空を見上げた山口冴子に、待ち受けていた友人達がライスシャワーを浴びせる。
「冴子おめでとう!」
「綺麗だよ、冴子!」
胸から流れるような薔薇のレースをあしらった透明感のある白いウェディングドレス姿の山口は、さながら6月のマーメイドだ。
最後尾に控えていた美月と石黒が、山口にライスシャワーの祝福をと待ち構えている。
山口の視線が美月を捉えると、戸惑いもなく手にしたブーケを投げた。
綺麗な放物線を描き、ブーケは太陽を遮りながら美月に向ってくる。
石黒が微笑んで、美月がブーケを受け取りやすいように身体をずらす。
パサリ
「おお!ブーケをいただいてしまったよ、石黒君!」
美月達の後で、山口の姿を見ようとピョンピョンしていた社長。
天使のいたずらか気まぐれか、社長の手にはブーケが握られていた。
「なんで社長がブーケを取るのです!」
「私がブーケを取ってはいけないのかね?羨ましいのかね、石黒君!」
美月は気落ちした様子も見せずに、社長にドライフラワーにすることをおすすめしている。
「次に幸せになれるのは私なんだね。ウム、楽しみだ」
すぐ近くで歓声があがる。
なんと、花婿の滝山が嬉しくて山口を抱き上げたからだ。
驚く山口のドレスの裾に、滝山の足が取られ、前のめりにつまずく。
放り出された山口を受け止めたのは、滝山の秘書ロボットグッチだ。
「ありがとうグッチ。晴れの日まで面倒かけてごめんなさい」
「サエコハ ワタシガ マモル アノ バカカラ」
「フフッ。グッチと結婚したほうが良かったかしらね」
滝山は慌てて山口に駆け寄り、怪我はないか?痛いところはないか?しつこく聞いている。
「大丈夫……貴方のそのバカさ加減が痛いだけ」
「いやぁ〜、冴子さんの毒舌は今日も最高!」
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