五千円のパンツ

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 それは、今日の昼休み、僕と同じくらい陰の道を極めている、悪友の発言であった。 「お前、〇〇ちゃんのパンツ、買わないか?」  悪友はスーパーのビニール袋から、ジップロックに入った、白い布を見せて言った。  白い布は〇〇ちゃんのパンツだろう。  中学生とは人生において一番ませる時期、性知識は保健体育の教科書を開かざるとも、クラスメイトの会話から否が応でも小耳に挟み、聞き取ることができる。  そんな訳で、例に漏れず、僕もそう言った、エロ、についてはいささかの興味があった。それは思春期における生理現象だ。  僕は言う。 「幾らだ?」 「五千円でどうだ?」  五千円、というのは絶妙な金額だ。  家にある豚の貯金箱をわれば、恐らくは足りるが、その豚の貯金箱は少ないお小遣いやお年玉を捻出して貯蓄したもの、そう易々と手放すことはできない。  非常に難しい問いであったのは確かだ、思春期というこの時期、女の子の、それも級友のパンツなど喉から手が出るような物品、しかし、そのような貴重な品が容易く手に入る訳でなく、それ相応の対価がいる。  ペンディングだ。熟考する必要性がある。 「一日待ってくれないか?」
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