五千円のパンツ

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「□□、ちょっと来い」  担任は手招きで悪友を教壇に誘った。  僕は悪友の顔を伺う、彼は不敵な笑みを浮かべていた、即座に勘ぐる、悪友のあの笑み、彼は僕を裏切るつもりだろう、僕と悪友は懇意でなく温情なんてものは一切ない、ビジネスライクな仲だった。  故に、悪友が僕を庇護したりするわけがない、きっと、僕を道連れにするはずだ。嫌な汗が頬を伝う。 「俺は盗んだパンツをある人に売りました、その人はこのクラスの中にいます」  悪友は半笑いで言った。  やはり、俺を裏切った、しかし、悪友は俺の実名を伏せ、あえて、ある人に売ったと言った。なぜ、そんな周りくどい方法を使ったんだ、やるなら一思いにやってくれ! 「そうなのか? おい、誰だ、女子のパンツを買った奴は! 手を挙げろ」  担任はそう捲し立てた。  しかし、俺が手を挙げなければバレない、このまま、うやむやにしてやろう。  クラスは通夜か葬式かの空気感に包まれた、気まずいから早く終わってくれ、これじゃ、胃潰瘍ができてしまうじゃないか。 「おい、早く手をあげろ、買った奴が分からなかった場合、先生はお前らの家に、片っ端から行って家宅捜索を行う所存だ、今のうちに自白しておく方がいいぞ」  担任の脅し文句、嗚呼、なんと俺は軟弱者なのだろうか、僕は怖くって目を瞑りながら、その脅迫に屈し手を挙げた。  言って、僕にも罪の意識はあったのだ、恥を蹴ったのは初めてではないし、ここで手をあげなきゃ一生後悔する、そう思ったんだ。  別に、イジメられようが、親に失望されようが構わない、それがパンツを購入した報いというもの、僕はそれを甘受しよう。  目を開ける。僕は眼前に見える光景に絶句した。
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