五千円のパンツ

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 冬と言うのは、なぜ、こんなにも日が暮れるのが早いのだろうか? いや、わかっている。それは地球が傾いているからだ。  これは文句である、帰宅部にもかかわらず、補習により、夕方過ぎ、学校の校門を抜けた僕の。  僕は中学生である、しかし、普通の中学生ではない、少なからず、そう思いたい。  僕は代わり映えのしない通学路を枷のついたような足取りで歩きながら、そう思った。  僕は所謂、陰のキャラ、インキャだ。クラスではあぶれ、運動をしたらすぐに息切れ、勉強をしたら赤点、家では母親を怒鳴りつける毎日、それが僕の日常。  実は光のドラゴンの力を僕は内包しており、悪の手先と戦う運命にある。とか、誇大妄想しないとやっていけないくらいには、僕の日常は鬱屈としていた。  それもこれも、今年の四月、入学式が終わった直後の、ホームルームが悪い。案の定、その場では、自己紹介たるものが行われた。  これは文字通り、自己を紹介し、円滑に学校生活を送るためにある、ここで印象の悪かった奴は爪弾きにされ、良かった奴は人気者へと確約されたレールが引かれる。  そんな、我が青春の貴重な三年間における処遇を左右する、重要な行事を、僕は盛大にやらかした。声が上擦り、てんぱり、自分の名前さえ明白には言えなかった。  あの時のことを思い出すと、今でも耳たぶがあつくなる。  そうして、近寄り難い雰囲気を意図せぬ形で形成してしまった僕は、以来、クラスメイトとのコミュニケーションをロクにせず、このザマである。  そんな青春を謳歌、というよりかは、黙読しているような日々に、一縷の希望の光が差し込んできた。
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