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それを聞いてハツさんの目がきょとんとした。 「玉三郎、って……。え? 玉三郎は文具屋さんの猫ですよ?」 「はい? 猫?」 タマサブロウが、猫? 「ふふふ、山本様、何を勘違いされたのですか?」 ハツさんが口元を隠して笑うのだが、後から後から笑いが込み上がるのか、中々おさまらない。 「文具屋の店先にいた男をハツさんが見ていらしたので、それでてっきり……」 「確かに店先を見ていました! でも見ていたのはお店の方ではなくて、そこにいつも玉三郎が棚の間だとかに隠れているのです。中々上手く隠れるものだから、見つけた時は嬉しくて……」 だから微笑んでいたと言う事だろうか。何という勘違いだ。 「申し訳ない。でも、そうか、猫だったのか……」 「そうですよ。玉三郎は猫です。猫なのに、お顔がキリリとして歌舞伎役者のようなのです!」 「ああ、なるほど」 合点すると、自分の勘違いに笑いが出る。 「ふふふ」 「ははは」 華乃やの庭に二人の笑い声が美しく溶けていく。 ハツさんの笑顔を見て、今なら何でも言える気さえするのだ。
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