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「お慕い申し上げておりますよ、ハツさん。ハツさんが好きです。ハツさんの優しい雰囲気が好きだし、淑やかに笑う口元が品があって好きです。あと、真っ直ぐに私と絡まるその視線も──」 そのまま私とハツさんの眼差しがゆっくり交わり、重なり、絡まり、(もつ)れ、…… 引き寄せられるように近付くと華奢な肩をそっと寄せて腕の中に閉じ込めた。 「離したくない。私と夫婦(めおと)になって下さい」 「………」 「ハツさん?」 震える肩に気付いて腕の力を弱めるとハツさんの顔を覗き込んだ。 泣いている。 「ハツさん?」 「……しい。嬉しいです。こちらこそ宜しくお願いします、山本様」 「はい! お願いします。ああ、ですが歳助と呼んでください。ハツさんもじきに山本になる訳ですから」 「まあ、そうですね」 ハツさんはまた顔を赤らめた。そして小さく口を開く。 「サ、……歳助様」 ハツさんに呼ばれただけで、まるで自分の名前が特別になった。まるで甘美な酒のように、名を呼ばれるだけで、ふらりと酔ってしまい、胸の中がぽかぽかと温かくなる。 「もう一度呼んで下さい」 「……恥ずかしいです。……歳助様」 お天道様のまろやかな日差しが私達を幸せに包み、祝福の陽光を燦々と降らせていた。 〈了〉
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