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待ち合わせ場所は、高等女学校正門より西側にある書店ではなく、それより更に西にある文具店の前。
そこには猫の玉三郎がいる。
そしてすでにハツさんとリエ嬢がお待ちであった。ハツさんがこちらに気付いて会釈してくださるので私は急ぎ足でそこに掛け寄った。
「お待たせしました」
「お疲れ様でございます」
ハツさんの微笑みが幸せなぬくもりを胸に運んでくれるので、この一瞬が癒やしの時間になっていた。
「歳助様、見てください、ここです」
ハツさんが少し屈んで、文具屋の店先にあった棚の間を指差すので、私も同様に屈んでそちらを覗き込んでみた。
「ああ、玉三郎ですね。おっと――」
玉三郎がいたのだが、私と目が合うと途端に逃げ出してしまう。
「また逃げられてしまいましたね」
「玉三郎には私が相容れないのでしょう」
きっと玉三郎もハツさんを慕っているのだ。だからこそ玉三郎はハツさんの隣にいる私を邪険にしているに違いない。
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