エミーとマリー

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 釣り堀に来てから一度も視線を合わせていない彼女達が、初めて視線を合わせた。小紋の女、エミーが、ワンピースの女、マリーを見た。  二人が周囲の視線を集めていたのは、容姿にも理由があった。白磁のように美しい肌に碧眼。髪は黒いが、若干色素が薄かった。  顔の造作は欧米人ほどの彫りの深さは無いが、知らぬ者には〝外国人〟に見えていただろう。  エミーは「ふうん」と応え、フフと笑う。 「結局、私とあなたは、違ったのね」 「何が言いたいの」  互いの視線は牽制し合うように硬い。張り詰め緊張した空気を、柔らかくとも低く威圧感を持った声が震わせた。
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