エミーとマリー

5/6
前へ
/652ページ
次へ
「私とマリーはとても似た境遇の中を生きてきたと思っていた。でも、今にして思えば私とあなたは、スタートも違えば、生き方も違ってた。私、なんでその事に気付かなかったのかしら」  剣のある声だった。 「随分と遠回しな言い方ね」 「じゃあ、はっきり言いましょうか。あなたは、変わった。この東京の街のように。何故、あんな事が出来るの」 「〝あんな事〟?」  二人が交わす視線に、微かな敵意が滲んだようだった。マリーが、クスッと笑った。 「もしかして恵三さんのこと?」  見返してきた視線にエミーはぞくりとした。初めて見るマリーの表情だった。 「あたしは、最初から貴女と同じなんて思ってないし。それに……そもそも恵三さんは、貴女のものじゃないでしょう?」
/652ページ

最初のコメントを投稿しよう!

104人が本棚に入れています
本棚に追加