ダブル不倫 〜リベンジ〜

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 チッ、チッ、チッ……。壁掛け時計の秒針が進む音で、優子は目を開いた。顔を上げる。ドレッサーの鏡に腫れぼったい自分の顔があった。床には優子の蜂蜜を纏ったロータが転がっている。    ――アノあと、寝ちゃったんだ。    優子は何も着けていない下半身に目をやった。    午前四時三十七分。カーテンから見える外はまだ暗い。時々、通るバイクの音は新聞配達だ。    ベッドに目をやる。修一はスヤスヤと眠っている。アラームの時間は六時だ。修一が目を覚ます時間には少し早すぎる。    優子は大判のタオルで身体に纏い、バスルームに入った。   「ふうっ……」    優子がシャワーを終えると、ベッドルームのドアが開いた。    五時四十五分。    まだ、目覚まし時計は鳴っていないはずだ。トイレから出た修一はペタペタとバスルームに入った。    ――修一さんが朝からシャワー?    修一は夜に風呂に入ることや、服を脱ぐことさえ面倒な性格だ。スラックスのときはともかく、ジャージ姿のときなどジャージ下、トランクス、靴下と、それはまるで昆虫の脱皮のようだ。    優子はベッドルームを覗いた。いつも枕元に置いてある彼のスマートフォンがなかった。修一はスマートフォンに頓着しないのだが、その日は違った。    ――スマホ、出掛けるときによく忘れるのに……。洗面所に?    優子は朝食の準備のあと、八歳になる凛華の長い髪を編んでいた。   「パパ、いつもはカラスの行水なのに、ねえママ?」    凛華が優子の口まねをして呟いた。   「そうね。パパは、お風呂で何してるんでしょう、ねえ?」   「……ねえ?」    と、二人で笑った。    ――……ったく、どこを洗ってんだか……。    結局、修一はシャワールームに入ってから、四十分近く出てこなかった。    :    ブラックコーヒー、野菜サラダ、目玉焼きに粗挽きソーセージと食パン。これが毎日の朝食メニューだ。   「ママ、パパの朝ごはんは……?」    修一のランチプレートにはブラックコーヒーだけだった。   「ああ、パパ、今日は朝ごはん、あまり欲しくないんだって……。お腹空くのにね?」    その日、修一は朝食を摂らずに家を出た。  
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