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ある土曜日の夜。娘の凛華が眠ったあと、優子は畠山と缶ビールを飲んでいた。ダイニングテーブルには飲み終えた缶ビールが数本転がっている。
午後八時を過ぎていた。修一はまだ帰っていない。
「畠山さん、ねえ?」
優子はテーブル越しに身を乗り出した。目を閉じて、畠山の唇を催促する。
畠山の冷たい唇の先が優子の唇を小さく啄む。
ん、んんっ……。
優子の唇が覆われた。彼の舌を誘う。テロンと生温かい畠山の舌がホップの苦みを送り込む。泡立つ苦味のある唾液を喉を鳴らして飲み干した。
カン、という乾いた音がした。玄関の鍵が回った音に二人の唇は離れた。二人はティッシュペーパーで唇を拭う。
――修一さんが……。
ダイニングルームの扉が開いた。
「あなた、おかえりなさい。あ、畠山さんと飲んでいたの」
「おじゃましてます。いつも、奥さんには色々と……」
畠山は椅子から腰を上げ、小さく頭を下げた。
「いえ、妻も娘もお世話になっているそうで、ありがとうございます」
修一はネクタイを緩めながら、椅子に腰を下ろした。
「ねえ、あなたも……」と優子は冷蔵庫から取り出した缶ビールのプルトップを引いてテーブルに置いた。
修一が喉を鳴らしてビールを流し込む。
「フゥッ、ああ、畠山さん、妻が何かご迷惑をお掛けしていませんか? 今日もこんなに遅くお引き止めして……。ああ、もっと飲んでください。何かいいツマミが……」
「いいえ、僕は充分に頂きましたので……」
修一がキッチンに消えた。
畠山のメガネの奥の目が優子を見た。優子がテーブル越しに身を乗り出す。
畠山も少し戸惑いを見せたあと、身を乗り出した。
ちゅっ……。
小鳥が餌を啄むように畠山の唇が触れた。舌の先を出して、彼の唇を待つ。畠山の唇が優子の舌先を啄む。
パタンと冷蔵庫のパッキンが閉じる音がした。
別れを惜しむように二人の唇が離れた。二人は椅子に腰を下ろした。
修一が畠山の前にビールを置いた。
「……はい、もっと飲んでくださいね」
ヴーン、ヴヴヴ……。
ダイニングテーブルに置いた修一のスマホが唸りを上げて震えた。優子と畠山が目を見合わせる。
「ちょっと、失礼……。まあ、ごゆっくり……」
修一はビールを喉に流し込んだ。ダイニングのドアの外に消える。どこかの部屋のドアの閉まる音がした。優子が修一の行方を目で追う。
「行った……」
「忙しいんだね。ご主人……」
「うん、これでね……」
と優子が小指を立てて見せた。
「ふーん……。優しそうに見えるのにね」
優子がテーブル越しに身を乗り出す。畠山の唇を待つ。
「気づくかな、奥さんと僕のこと……」
畠山の唇が近づく。
「気づかないわ……」
「そうなんだ……」
「興味ないからね。家族には……」
優子の両方の手が、畠山の頭を引き寄せる。彼の首筋に唇を落として、噛み付くかのようにそこを吸う。
ちゅっ……。
「たっ……」
「ふふ、キレイな桜の花びらが……」
優子は畠山の首筋につけた〈桜の花びら〉のプリントに唇を落とした。貪るように畠山と舌を絡める。
:
「試してみましょうか?」
「えっ……?」
「主人が気づくかどうか、をね?」
優子は畠山の横の椅子に移動した。
「もし、気づいたら……?」
畠山の表情が固くなる。彼の頬が高揚している。
「殺られるわ、きっと……。二人とも…………。学生の頃、柔道部だったから……」
優子は畠山の手首をとった。自分のシャツの上から胸の膨らみに畠山を導く。
畠山の手は動かない。
優子が彼の手に自分の手のひらを添える。彼の手を手伝う。カサッと布が擦れ合う音。ふわっと畠山の指を感じた。
「んっ……、あっ……はあ、畠山さん……」
子宮に熱を帯びた。
溢れた蜜がショーツに染み込むのが分かった。優子は畠山の手を自分の襟元からシャツの中に誘導した。冷たい手のひらが優子の膨らみ包む。ツンと尖った先端が畠山の手のひらに触れてもどかしかった。
「ああ、奥さん……。僕……」
優子は畠山の冷たくふっくらとした下唇を何度も啄む。
畠山の手は胸の膨らみにある。彼の指が胸の柔らかさを楽しむようにモゴモゴと海洋生物のように動き始める。
チリチリと下腹が熱い。舌は畠山の舌に絡めている。ため息が出そうだった。優子は畠山の股間を探る。ゴリゴリとした固い肉塊の感触を感じた。
「ああ、奥さんっ……」
「ふふふ、ゲンキ……」
優子は畠山の座った椅子の前に膝をついた。
彼のジーンズの腰ボタンを外し、ジッパーを下げた。優子は彼のジーンズとボクサーパンツを下ろす。バネのような畠山の赤黒い肉塊が優子の目の前にあった。
――凄っ……。
「ああ……、奥さん……畠山さん、ドMね?」
ちゅっ……。
優子の唇が浮き上がった畠山の青筋に沿う。
「僕がドM……そうかも……」
天を仰ぐような畠山の肉塊から透明な粘りが溢れる。優子はそこに唇を当て、それを啜る。はち切れんばかりに赤く膨らむ畠山の先端を頬張った。
畠山の喉元が開いた。
「……私もドMよ」
優子は自分の手をスカート下に潜らせた。ショーツのクロッチから指を差し込み、溢れた蜜をすくい取る。それを畠山に差し出す。
「ああ、奥さんの……」
と、言いながら、畠山は優子の指先に絡む蜂蜜を舐め取る。
「もしかしたら、主人がここに戻って来るんじゃないかって心配しながら……こんなにね」
「僕もそれが心配で仕方ありません」
「で、これ……? 凄いね」
畠山の肉塊が優子の手の中でグンと固さを増す。時折、ピクンと弾けるようなそれをゆっくりとシゴいた。その括れに舌を絡める。
畠山の喉が開き、吐息のような呼吸が漏れる。
優子は熱を帯びた畠山の先端から口に含んでゆく。それに溢れる唾液を絡める。
「奥さん……」
「優子って呼んで……」
「優子さん……キモチいい」
「畠山さん、下の名前は……?」
「ああっ、晶……んんっ……」
「ねえ、晶くん、試してみましょうか。もっと凄いこと……」
と、優子は息だけの声で言うと、唇の先で畠山を啄んだ。
優子は辺りを見渡した。スカートをたくし上げ椅子に座った畠山を跨ぐ。ショーツは着けたままだ。彼の肩に手を置いて、天を仰ぐ畠山に腰を下ろした。
ギイ、と椅子が軋んだ。優子の目が辺りを確かめる。
畠山をクロッチ越しに感じていた。腰を上げる。ショーツの中で粘着質の音がした。
畠山はうっとりと目を閉じている。
優子は自分のクロッチを横にずらした。ゆっくりと体重を掛ける。畠山の熱を感じていた。身体の奥にめり込んでゆくような鈍い痛みが優子の身体の中に溶けてゆく。
「んっ、んんう、ああ……。晶っ……」
「ああ、優子さんの膣、熱い」
畠山の吐息混じりの声のあと、その口が〈あ〉の形に開いた。やがて、それは〈お〉の形に変わる。
クポッ、という音。内側の腿に熱いものが垂れる。畠山で満たされている。子宮が身体の奥に押し込まれる。畠山の体温が優子の膣で溶ける。彼の脈を身体の奥に感じていた。
優子は畠山の頭を引き寄せ、舌を絡めた。音は二人の熱い吐息とカサカサという衣擦れの音が聞こえるだけだった。
バタン、どこかでドアが閉まる音がした。二人の動きが止まった。
「ごめんなさいね。晶くん……」
優子は身体を離した。乱れたスカートとシャツを整えた。
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