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「『銀河鉄道の夜』に、何か、心当たりはありませんか?」  と、聡は座りながら言った。 「『銀河鉄道の夜』……?」  聡は古本屋であったことを話した。  宮子はしばらく悩んでいたようだったが、「ねえ、あなた」と達也を呼んだ。 「隼人が好きだった絵本って、『銀河鉄道の夜』だったわよね」 「ああ、そうだったな」  達也はいちごに夢中になっている優に「ちょっと向こうに行ってくるけど、食べてていいからな」と声をかけて、聡と宮子の元へと歩いてきた。 「それが何か?」 「あの……」  聡は説明しようとしたが、「あなた、ちょっと、持ってきてもらえない? 絵本」と、宮子が遮った。 「私、あの子の部屋、あまり入ったことなくて。入ると怒られたし」 「わかった。持ってくる」  達也はもう一度優に声をかけると、ビニールハウスを出ていった。  家へと向かう達也の背中を見ながら、宮子は言った。 「あの人、幽霊とか信じてないんです。だから……」  と、宮子は目を伏せた。 「ありがとうございます」  そう言って、聡は緑の中に埋もれてハムスターのように頬を膨らます優に目をやった。
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