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しばらくして、達也は一冊の絵本と二冊の文庫本を持ってきた。
「絵本の横に、二冊同じのがあったんだけど……」
三冊とも、表紙には『銀河鉄道の夜』と書かれている。絵本は煌びやかな夜の星空と闇に沈むような漆黒の鉄道が描かれている豪華な表紙だが、文庫本は藍色の空にいくつかの星がちりばめられているシンプルな表紙だった。
「少し拝見させてもらってもいいですか?」
「ああ、どうぞ」
三冊の本を受け取った聡は机の上に広げ、その中から絵本を選ぶとぱらぱらとめくった。星空や鉄道などが、まるで闇と光を操っているかのように幻想的に描き出されている。
一通り目を通すと、次は文庫本を開いた。古びて黄色くなっているページをめくっていくと、最後のページで手を止めた。
「……そういうことか」
小さくそう呟くと、もう一つの文庫本は最後のページだけを開いた。
「……すみません。これ、借りてもいいですか?」
聡はそういうと、何度も読み返されて古くなった方の文庫本を持ち上げた。
「ええ、いいですけど……」
聡はいちごを頬張っている兄を一瞥すると、困惑する隼人の両親に説明を加えた。
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