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 日が傾き、商店街にも夜の影が近づき始めていた。 「お待たせしました」  農園から帰った兄弟が古本屋に足を踏み入れると、やはり店内に客はいなかった。 「わかったんですか?」 「はい」  その返事に勢いづいてカウンターから身をのりだす明日香に、「明日香さん、これ!」と、優が割って入った。手にはいちごのパックが箱に四つ入れられている。 「……いちご?」 「美味しいですよ」  事情も分からず困惑する明日香に、「隼人さんの実家でもらってきたんです」と聡が補足した。 「……ありがとうございます」  水を差されて勢いを失った明日香は、優の満足そうな顔を見た。  聡は一つ咳払いをすると、「これが原因でした」と言って、明日香に文庫本を手渡した。 「『銀河鉄道の夜』」 「はい」 「これが……どうしたんですか?」 「最後のページを見てください」  明日香は後ろからページをめくった。  すぐにいきついたそこに書かれていたものを見て、「なんで……」と声を漏らした。 『山本明日香』  最後のページには、シャープペンシルでそう記されていた。 「本の貸し借りをしていたと言っていましたよね。貸したままになっていたんじゃないですか?」  最後まで聞き終わる前に、明日香ははっとしたような顔になった。
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