表/裏

2/7
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
 待つこと二日。  夜にバッグが届いた。    早速箱を開けて中を見る。  色褪せもないし、傷もない。  新品といってもいい。多分全然使わないでいたのを売ったんだろう。 綺麗だ。満足。  エミルさんにお礼のメールを送ろう。  ベッドに座って、スマートフォンを操作する。 「無事届きました。大事に使います。ありがとうございました」  テンションは上がっているけど、文面は冷静に。  送信。  一時間ほど後にきたのは、シンプルなお礼。それと気に入ってくれて良かった、という一言だった。  次の日、大学にサブバッグとして持って行った。  新しい物が一つあるだけで気分が違う。 「おはよう」  講義室に入り、一人座っていた絵梨に声をかけた。 「おはよ。ってカバン新しくなってない?」 「分かる?」  絵梨は誰かが髪を切ったらすぐ指摘する。そういう子だ。ブランド品には興味なさそうだけど、そのまま話を続ける。 「フリマで買ったの」 「ちょっと見せて」  好奇心旺盛。ちょっとこどもっぽいのはいつものこと。  良いよ、と答えて貸した。    裏表。全体を見る。  さすがに中までは見ないけど、遠慮のえの字もない。  名前にはえが付くのに、とか緩いことを思っていたら、絵梨がバッグを返してきた。 「これ、偽物だよ」 「え?」  意外にも分かるらしい。というか、その前に言った一言に驚いた。    そんなにはっきり言わないでほしい。それもよく通る声で。誰かが寄ってきたら、と焦り半分に思ってたら、怜奈がきた。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!