久美子とカンラン

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久美子とカンラン 久美子が12歳のとき、両親は久美子にかわいい子犬を買ってくれました。 久美子はその犬をカンランと名付けました。とても小さかったカンランは、すぐに、 大きくなりました。 久美子の家には、大きな庭がありませんでしたので、カンランは十分に運動することが出来ませんでした。そこで、久美子は学校から帰ってから、毎晩、カンランを散歩に連れて行きました。 カンランは、外に出られることがとても嬉しくて、跳んだり、駆け廻ったり、吠えたりしました。散歩から帰っても、久美子はカンランを繋ぎませんでした。カンランが夜、逃げ出さないことを知っていましたのです。 そして、朝、学校に行く前に犬小屋に鎖で繋ぎ、久美子が日中、学校に行っている間に、 カンランが近所を走り廻らないようにしました。 カンランは、自由に走り廻るのが好きでした。一日中、繋がれていることは、大嫌いでした。カンランは夕方の運動と自由な時間が、とても大好きでした。でも、朝、繋がられるのは嫌でした。 久美子にはカンランがカンランが繋がられるのが嫌いのは、分かっていましたが、どうすることも出来ませんでした。 久美子は、時々夜遅くに、カンランが近所を走り廻っているのを知っていました。でも、何も悪いことをしている訳でもないし、毎朝、必ず家に戻ってくることが分かっていましたので、全く心配していませんでした。 ある朝、久美子がカンランを繋ごうとしましたが、庭にカンランの姿が見えませんでした。 久美子は、何度も何度もカンランと呼びました。初めの内は、優しく呼んでいましたが、全く応答が無いので、もっと大きな声で呼びました。 しかし、カンランの吠える声は聞けません。心配になって、通りに出て、カンランを呼びました。近所の塀越しに声を掛けたり、通りに行ったりしました。たぶん、どこかの家の 庭にいると考えたからです。そうしているうちに、学校に行く時間になりました。久美子は渋々、家を出ました。 その日、学校から帰るとすぐに、久美子はお母さんに、カンランが帰ってきたかと尋ねました。お母さんが、未だ戻ってこないと言うと、カンランを捜すのを手伝って欲しいと頼みました。 二人は、カンランの名前を何度も何度も呼びながら、近所を捜し廻りました。しかし、見つかりません。久美子は、とても心配になりました。 夕方になっても、カンランは見つかりませんでした。久美子はカンランのことが、とても心配になりました。夕食を食べても、何を食べているのか分かりません。テレビを観ても うわの空です。数学宿題を少しやりましたが、全く解くことが出来ませんでした。 いったい、カンランはどこに行ってしまったのだろうか。なぜ、戻ってこないのだろうか。 久美子は、いろいろ心配しました。 カンランは、6日間も家に戻ってきませんでした。久美子は、すっかり、落ちこんでしまいました。 翌日の朝、久美子が学校に行こうと思って玄関のドアを開けたとき、玄関の前にカンランが座っていました。久美子は、非常に喜びました。久美子はしゃがんで、両手をカンランの。首に回して「カンラン」と優しく言いました カンランを注意深く見ると、体がすっかり痩せてしまっていることに気が付きました。 「まあ、カンラン、可哀そうに。6日間も何も食べなかったのね。こんなに痩せてしまって・・」久美子はもう一度カンランを見ました。すると、カンランは久美子に近付こうとしましたが、体が動かないのです。どこか、とても痛がっているようです。 両脚をよく観ると、骨折していました。久美子はびっくりして、頭に手を置いて優しく なでてあげました。カンランは、嬉しそうに尻尾を振って、ほっとした表情で久美子を 見ました。 「カンラン、そんなに痛いのに、頑張って 、家に帰ってきたのね」心の中で思いました。 久美子は、もう一度、カンランを見つめました。カンランは尻尾を振りながら、力を 振り絞って、久美子に近づこうとしました。久美子は、感動しました。 カンランの頑張りに感激して、わっと泣き出しました。
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