花束じゃなくていい

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「失礼しまーす!」 明るい笑顔であかねは保健室に入る。 「失礼します…。」 俺は気が引ける思いでいっぱいで、小さな声を出した。 「あら、おはようございます。どうしたの?」 保健室の先生はあかねを見、それから俺に視線をうつした。 「この花をここに置いてほしいんです。」 あかねが隠すように俺と先生の間に入った。 「花?」 先生の怪訝そうな声が聞こえるがその表情はあかねのせいで見えない。 「はい!お願いします!帰りには取りに来るので。」 明るい声で答えるあかねの後ろで俺は一人おろおろする。 先生が体を傾けて俺を見る。 「了解です!」 先生はそう言って、大人とは思えない幼い顔で笑った。
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