清純には慣れておりません

14/33
918人が本棚に入れています
本棚に追加
/247ページ
咲子は目を潤ませて、圭子の手を取った。 「ありがとう… それで良かったです。 あ~、でも、嬉しい。 このお話が本物だったって事よね? 私、あまりにも連絡が来ないから、母に騙されてるのかもなんて思っていたの」 咲子は胸に手を当てて、涙をホロホロと流した。 このチャンスを逃したら、この団体はこのまま消えてなくなるだろう。 それくらい、お金に困っているから。 「咲子様、泣くのはまだ早いですよ。 だって、その男の人、何だか愛想がなくて、事務的に物を言う人でしたから。 本当に咲子様を助けてくれるのかしらって、疑いたくなるくらい」 咲子はまた圭子の手を握った。 「圭子さん、大丈夫よ。 今まで練習してきたプレゼンテーションをやっとお披露目する時がきたんだもの。 私の熱意をちゃんと分かってくれるはず…」 「咲子様が泣かずにちゃんと最後まで言えればですけど… 途中で必ず泣いちゃうんだもん」 咲子は肩をすくめて苦笑いをした。 「やっぱりあの捨て犬たちのくだりは省いた方がいいかしら? あそこになったら、どうしても涙がこみ上げてくるのよね…」 圭子はクスッと笑った。 でも、そこが咲子様のいいところで愛される根幹だった。
/247ページ

最初のコメントを投稿しよう!